北海道大学大学院先端生命科研究院の門出健次教授、マハデバ・スワミイ助教らの研究グループは、乳がん等の検出のための蛍光プローブ(機能性試薬)を開発しました。本研究は、低分子抗がん剤と蛍光色素を組み合わせて体内のがんを検出する新しいツールの開発に焦点を当てています。本研究で研究グループはFDA承認のエストロゲン受容体標的薬であるタモキシフェンを選択し、短波赤外(SWIR、900〜1,400 nm)領域で作用するプローブを設計しました。タモキシフェンのような低分子ベースのプローブは、がんバイオマーカーに対して高い特異性を維持し、抗体ベースのプローブと比較してより好ましい薬物動態を示します。さらに、SWIR領域でのイメージングは、従来の可視(400〜700 nm)及び近赤外(NIR、700〜900 nm)イメージングに比べて、より深い組織浸透やより高いシグナルバックグラウンド比など、大きな利点を提供します。
今回、エストロゲン受容体陽性乳がん等を標的とするSWIR発光プローブの開発に初めて成功しました。この成果は、生物医学応用にとって非常に重要な基盤技術と考えられます。
なお、本研究成果は、2025年7月18日(金)公開のACS Medicinal Chemistry Letters誌にオンライン掲載されました。
【ポイント】
- 抗がん剤に蛍光色素を結合させることで、簡便ながん診断の実現が期待される。
- 未開拓の領域である短波赤外線を活用することで、切開を伴わないがん診断に期待。
- 蛍光造影剤として使用して手術を行う際、腫瘍の縁をより鮮明に視覚化することが可能に。

プレスリリース:蛍光色素が結合した抗がん剤による腫瘍のイメージング~短波赤外蛍光色素の利用によりがんの発見と手術精度の向上に期待~(先端生命科学研究院 教授 門出健次)