物理学部門 速水賢教授の論文が「Journal of the Physical Society of Japan」誌のMost Cited Articles2024に選出されました。
Chiral Charge as Hidden Order Parameterin URu2Si2
物質が示す多様な物性は、スピンや軌道といった電子の内部自由度の秩序化に伴う対称性の変化によって生じます。これらの秩序状態は、数多くの実験手法によって観測され、物性物理の発展に大きく貢献してきました。一方で、比熱測定により明確な相転移が観測されていながら、その微視的起源や秩序変数が未解明なままの「隠れた秩序」も存在します。その代表例がURu2Si2であり、17.5Kで相転移を示すことが報告されていますが、35年以上にわたって、その本質は謎に包まれたままです。この未解明の秩序状態に対し、速水教授らの研究グループは、「カイラル電荷」という新たな電子自由度がその秩序変数である可能性を理論的に提案しました。カイラル電荷とは、スピンと異なる軌道間の混成によって形成される擬スカラーの単極子(モノポール)であり、結晶の局所的な回転対称性を保持したまま秩序を形成できるという特異な性質を持ちます。この自由度は、通常の電荷や磁荷とは質的に異なり、従来の実験手法では検出が困難であったと考えられます。研究グループはこの理論に基づき、カイラル電荷の存在を検証するための複数の実験手法も提案しています。重要なのは、このカイラル電荷という概念がURu2Si2に特有のものではなく、他の物質系にも普遍的に適用可能であるという点です。これにより、未知の相転移現象に対する新たな理論的枠組みが整備され、今後の新物性の発見につながることが期待されています。
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