生物科学科/高分子機能学出身で、現在、大学院生命科学院ソフトマター専攻修士課程2年の大木優也氏、生物科学科/高分子機能学出身の塚本 卓助教(大学院先端生命科学研究院)らの研究グループは、全長型アニオンチャネルロドプシンが硝酸イオンを優先的に輸送すること、及びその仕組みの一端を明らかにしました。また、硝酸イオンを優先的に輸送する機能は、宿主生物(海洋藻類)が窒素源を獲得するために役立っている可能性を示唆しました。
タンパク質の基礎研究では、特定の構造を持たない末端部分を切除することが、試料安定化や遺伝子組換えによる発現量増加のための手段の一つになっています。しかし、これではタンパク質の本来の機能だけでなく、切除された部分の機能的役割を見逃すおそれがあります。本研究の対象であるアニオンチャネルロドプシン(由来生物の名前を含めて以下、GtACR1と表記)もまた、末端にある細胞内ドメインがその役割を検証されないまま切除された状態で、研究が行われてきました。
そこで本研究では、こうした現状を打破し、GtACR1の本来の機能と、細胞内ドメインの機能的役割を明らかにすることを目的に、全長型アニオンチャネルロドプシン(以下、GtACR1_fullと表記)の機能解析を行い、これまで研究されてきた細胞内ドメインが切除されたGtACR1との比較を行いました。その結果、GtACR1_fullは、宿主生物の窒素源になり得る硝酸イオンを優先的に輸送すること、細胞内ドメインはその選択性を担っていることを明らかにしました。
なお、本研究成果は、2023年9月29日(金)公開の Journal of Biological Chemistry 誌に掲載されました。
詳細は北海道大学HPのプレスリリースをご覧ください
タンパク質ドメインの見過ごされてきた機能的役割を解明~イオンチャネルの新しいイオン選択の仕組みの解明に向けて~(先端生命科学研究院 助教 塚本 卓)