大学院理学院修士課程の谷口諒氏,理学研究院の伊庭靖弘准教授,電子科学研究所の西野浩史助教,総合博物館の山本周平博士,福岡大学理学部地球圏科学科の渡邉英博助教は,約1億年前(白亜紀中ごろ)のミャンマーに生息していたゴキブリの仲間Huablattula hui(フアブラッツラ・フイ)の微小な感覚器官を詳細に解析し,感覚システムや生態の高精度な復元を行いました。
本研究では,従来手法を用いた複眼の解析に加えて,理学研究院薄片技術室の中村晃輔技術専門職員と共同で開発した新規の破壊的手法を適用した触角の解析から,本種が多くの現生ゴキブリに比べて視覚機能に優れており,明るく開けた生息環境に適応していたことが明らかになりました。また,触角上の性フェロモン受容器の特徴から,現生のカマキリに類似した異性間コミュニケーションをとっていた可能性も示唆されました。これらの結果は,白亜紀以前のゴキブリが現在よりも多様な生態的地位を占めていた可能性が高いこと,微小感覚器官の解析が化石昆虫の詳細な生活スタイルの復元に極めて有効であることを示しています。
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