理化学研究所(理研)開拓研究本部Kim表面界面科学研究室の今田裕上級研究員、今井みやび特別研究員、金有洙主任研究員、北海道大学(理学研究院化学部門)の武次徹也教授、岩佐豪助教らの共同研究グループは、ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)サイズの領域に局在する光を用いることで、原子分解能を持つ顕微鏡で観察しているナノ物質の性質を直接測る精密ナノ分光手法を確立しました。
本研究成果は、エネルギーの高効率利用に向け、ナノスケールの分子系で生じるエネルギー変換や物質変換の機構解明に貢献するものと期待できます。
これまで、精密な分光計測には主にレーザー光が用いられてきましたが、空間分解能が数百nmと不十分でした。一方で、原子分解能で物質を観察できる顕微鏡では、精密な分光法が開発されておらず、顕微鏡で見ているナノ物質の性質を正確に測ることは困難でした。
今回、共同研究グループは、原子分解能を持つ走査トンネル顕微鏡(STM)と狭線幅の波長可変レーザーを組み合わせ、マイクロ電子ボルト(μeV、1μeVは100万分の1eV)という高いエネルギー分解能とnmという高い空間分解能を併せ持つ精密ナノ分光法を開発しました。さらにこの手法を用いて、化学種の同定、ナノ空間で生じるシュタルク効果の発見とその機構解明に成功しました。
本研究は、科学雑誌『Science』オンライン版(7月2日付)に掲載されました。
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