理学院自然史科学専攻 多様性生物学講座・髙木研究室の澤田明さん(D3)が令和3年3月17日~21日にオンラインで開催された第68回日本生態学会大会(岡山大会)において、ポスター賞「行動/Behavior部門」で最優秀賞を受賞しました。発表タイトルと著者は「体サイズに関する同類交配は積極的な配偶者選びの結果か:長期研究データによる検証/Assessment using long-term study data: are size assortative matings really explained by active mate choice?」澤田明(北海道大学)・岩崎哲也(大阪市立大学)・高木昌興(北海道大学)です。
髙木教授の研究室では、20年来、大学院生・学部生・髙木教授が南大東島のリュウキュウコノハズクを個体識別し、各個体の生活史形質の丁寧な記述、採血による血縁関係の解析などを行っています。この受賞研究では、そのようなデータを基にすることで、それぞれの個体の生存率や生涯繁殖成功を扱うことができています。つまり正確な適応度を把握し、どのような形質が真に有利な形質なのか考える精密な研究を実現させています。
以下は講演要旨です。
体サイズの同類交配に関わる進化学的事象の理解には、その同類交配がどのようなメカニズムで生じているのかを解明する必要がある。たとえば体の大きなオスが繁殖能力の高い体の大きなメスを獲得するオス間競争において有利であることは、体サイズの同類交配をもたらす主要なメカニズムである。しかし、鳥類の特に猛禽類の体サイズの同類交配では異なるメカニズムが働いている可能性がある。なぜなら猛禽類では一般的にオスが小さいことが知られており、小さなオスが選択的に有利であると考えられているからである。我々はフクロウ科の一種であるリュウキュウコノハズクの長期研究個体群を用いて、同類交配の生成メカニズムの解明を試みた。解析には778個体のデータを用いた。嘴の長さと翼の長さに関して有意な同類交配が生じていることが明らかになった。これらの有意性は、サイズの似た者同士が受動的に出会いやすいという状況を考慮したうえでも有意性が維持されていた。ゆえに、リュウキュウコノハズクでは体サイズに関して積極的に配偶相手を選ぶことで同類交配が生じていることが示唆された。また、縄張りを所有するオスが変わった際に、その変化前後で所有者の体サイズに有意な違いはなく、体サイズがオス間の争いにおける有利さに寄与しないことが示唆された。さらに、翼の短いオスは高い繁殖成績や生存率を持つことが明らかになった。本種においては、オスが縄張りを先に獲得しそこにメスが定着することでつがい形成がなされる。したがって、リュウキュウコノハズクはオスではなくメスが積極的に小さなオスを配偶相手に選び、体の小さなメスがその選択において有利であることで、体サイズの同類交配が生じている可能性がある。小さなメスが小さなオスを選ぶという説明は、大きいオスが大きいメスを選ぶという従来の説明と対をなすものであり、体サイズの同類交配が生じるメカニズムとして新しいものである。