生物科学科の卒業生であり、多様性生物学系の高木研究室に所属する金杉尚紀さん(理学院博士後期課程3年)らからなる北大ヒグマ研究グループ(北大クマ研)と、獣医学研究院の坪田敏男教授(研究当時、現・名誉教授)らの研究グループは、ヒグマによるデントコーン(飼料⽤のトウモロコシ)利用がミズナラとデントコーンの双方の利用可能性に左右されていることを明らかにしました。本成果は、ヒグマによる農作物被害を防止する上で、農作物自体の利用可能性を管理する未然防除の重要性を示唆したものです。
金杉さんの所属する北大クマ研は、北海道大学の学生で構成された学生サークルであり、北海道大学天塩研究林において、1975年からヒグマの調査を継続的に行ってきました。本研究は、北大クマ研により学生主導で収集されたデータに基づいており、学生主体のモニタリング調査によって野生動物の保護管理における重要な知見が得られた希有な例でもあります。
野生動物による農作物被害をはじめとする、野生動物と人間の軋轢は大きな社会問題となっています。農作物被害の発生要因を特定するためには、自然の食物の利用可能性だけでなく、農作物の利用可能性も考慮することが重要です。しかし、多くの先行研究では、その一方のみに着目して研究がなされてきました。ヒグマによるデントコーンの利用についても、ミズナラが不作の年にその利用が増加することは知られていましたが、デントコーン自体の利用可能性の重要性は不明でした。
そこで、本研究ではミズナラとデントコーンの利用可能性が、ヒグマによるデントコーンの利用に影響を与えるのかを解析しました。その結果、双方の利用可能性が統計的に有意にデントコーンの利用に影響を与えていることが明らかになりました。このことから、ヒグマによるデントコーンの利用を防止するためには、農作物の利用可能性を管理することも重要であることが示唆されました。
なお、本研究成果は、2026年7月20日(月)公開のWildlife Biology誌にオンライン掲載されました。

論文情報
論文名:The relative abundance of crop and natural food influences crop consumption by brown bears(ヒグマによる農作物利用の発生に自然の食物と人為的な食物の利用可能性が与える影響)
著者名:⾦杉尚紀1,2、伊藤泰幹1,3、⼤⽵賢登1、葉⼭翔太1、酒井颯汰1、遠藤優4、勝島⽇向⼦1,5,6、中村⼀輝1、古巻翔平1、新保了1、坪⽥敏男7
(1北⼤ヒグマ研究グループ、2北海道⼤学⼤学院理学院、3北海道⼤学⼤学院⽂学研究院、4北海道⼤学理学部、5北海道⼤学⼤学院地球環境科学研究院、6北海道⼤学総合イノベーション創発機構、7北海道⼤学⼤学院獣医学研究院)
雑誌名:Wildlife Biology
DOI:10.1002/wlb3.01693