新入生、そして未来の理学部生へ
〜ようこそ理学部へ〜
北海道大学理学部、そして総合理系に入学された皆さん、ご入学おめでとうございます。理学部の教職員を代表して心からお祝いを申し上げます。新型コロナウイルスの感染拡大防止の措置により入学式が中止となり、例年とは異なる船出とはなりましたが、皆さんはこれからの大学生活を思い描き心弾ませておられることと思います。皆さんの門出を祝し一言ご挨拶申し上げます。
北海道大学は1876年に設立された札幌農学校を原点とし、4つの基本理念、すなわち「フロンティア精神」「国際性の涵養」「全人教育」「実学の重視」を掲げ、教育・研究を実践してきました。「フロンティア精神」は新しい道を切り拓くべく挑戦する精神、「国際性の涵養」は異文化理解能力、コミュニケーション能力を涵養し国際的に活躍できる人材を育成すること、「全人教育」は専門性だけでなく、優れた人格と幅広い教養を身につけた人間の育成を図ること、「実学の重視」は普遍的学問の創造および基礎研究および応用研究を共に重視して研究成果を社会に還元する姿勢を意味しています。150年近い歴史を誇る北海道大学はこの基本理念の下に、様々な分野において学問の発展および人材育成に重要な貢献を果たしてきました。
その中で理学部は、北海道帝国大学理学部として、学内では農学部、医学部、工学部に次ぐ、4番目の学部として1930年に設立されました。それまでの応用系の学部とは異なり、初の基礎科学を標榜する学部の誕生でした。理学部校舎は札幌初の本格的コンクリート製の建造物であり、その美しい姿は現在も北海道大学総合博物館として見ることができます。建物正面にある吹き抜けの階段室の天井はドーム状となっており、アインシュタインドームの愛称で知られています。その天井付近の4面の壁には「果物」、「ヒマワリ」、「こうもり」、「ふくろう」のレリーフが飾られています。これはそれぞれ、朝、昼、夕方、夜を表し、研究・教育には昼も夜も無く取り組む決意を表し、理学部創立当時の「理学部を理学研究のメッカにしたい」という熱い思いと高い理想を示していると言われています。機会があれば是非、実物を見て先人達の情熱に思いを馳せてください。
理学部は、数学科、物理学科、化学科、生物科学科(生物学・高分子機能学)、地球惑星科学科の5学科6専修から構成されています。各学科は、研究対象も研究手法もそれぞれ異なり、共通点も少ないように思えます。しかし、これらの学科に通底する「理学」の精神を皆さんには是非理解してもらいたいと思います。それは、各人の自由な「知的好奇心」に基づき、自然界や数理における未解明の謎を解き明かしていくことを目指そうという姿勢です。知的好奇心こそが新たな発見・研究の原動力であり、私たちが最も大切にしている精神です。理学部に来たら、「理(ことわり)」を解き、「知」を創る能力」(=現象を解析し、真理・法則を発見・検証し、次を予測する力)を大いに鍛えてください。このような能力は社会のあらゆる分野で共通に必要とされる重要な能力であると私たちは信じています。
北海道大学理学部は1930年の創立以来90年間にわたり、数々の素晴らしい研究成果を生み出し、世界に発信してきました。また、幅広い分野で活躍する卒業生が数多く輩出しました。今日から皆さんは、理学部の一員としての誇りをもって充実した大学生活を送っていただきたいと願っています。そして、総合理系に入学した皆さん、来年の4月には理学部でお会いできることを楽しみにしています。
最後に大事なメッセージを。健康にはくれぐれも気をつけてください。健康な肉体、精神こそ最大の財産です。
理学部長 堀口健雄
令和2年4月1日