小亀一弘教授の研究室において、2018年に国際藻類学会誌(Phycologia)に発表した論文がその年のBest Paperに選ばれ、このたびTyge Christensen Prize 2018を受賞しました。第1著者は小亀研究室の博士課程2年の星野雅和さんであり、第2著者は同じく小亀研究室の修士課程修了生の石川彰造さんです。
この論文は、日本産の褐藻カヤモノリ種複合体(Scytosiphon lomentaria species complex)を材料として、近年主流になっているDNA情報を用いた種境界探索法によって推定された種境界と、培養株を用いた交雑試験によって明らかになった種生物学的な種境界が、よく一致することを示したものです。
審査員評によると、DNA情報から示唆された種境界を、交雑試験により種生物学的側面から検証した点、近縁な種間に接合前隔離機構と接合後隔離機構が存在する証拠を示した点(多くの動物や陸上植物で示されてきたが、海藻類では報告例が少ない)が、藻類における種分化研究の良きモデルとなっていることを評価されたとのことです。
受賞論文:Masakazu Hoshino, Shozo Ishikawa and Kazuhiro Kogame (2018), Concordance between DNA-based species boundaries and reproductive isolating barriers in the Scytosiphon lomentaria species complex (Ectocarpales, Phaeophyceae). Phycologia 57(2), 232–242.(https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.2216/17-77.1)