新入生のみなさんへ ~ようこそ理学部へ~
理学部に入学、移行そして進級された皆さん、この度は誠におめでとうございます。理学部教職員を代表して、心よりお祝いを申し上げます。理学部は北海道大学4番目の学部として1930年に創立され、昨年(2020年)、90周年を迎えました。皆さんも今日からこの伝統ある理学部の一員となります。教職員一同、皆さんを心から歓迎いたします。
さて、昨年は新型コロナウイルス感染症の拡大のために、皆さんは大変な苦労をしたと思います。世界中が遭遇する事態でしたが、その中で本当によく頑張りました。ご存知のように、まだコロナ禍は収束しておらず、全ての講義を対面で安全に行える日がいつ実現するのかわからない状況です。しかし、理学を志す皆さんは、様々なデータや推測が飛び交う中でも、どうか冷静かつ客観的に事実を見据えて、今できる事に全力を注いで欲しいと願います。
様々な制約があったとはいえ、皆さんはしっかりと修学し、入学あるいは進級しました。今日は皆さんの努力とは別の話を一つ、私の専門分野から紹介させてください。コロナ禍においても教育活動が維持できたことにはインターネットやコンピュータといった情報通信技術の普及が大きく貢献しています。これらの技術は元をたどれば1900年代に入ってからの電子の発見、それに引き続く半導体の発見、さらには20世紀最大の発明とも言われるトランジスターの発明(1947年)に遡ります。
トランジスターの発明は米国ベル研究所の3名の物理学者によってなされました。現在のパソコンのCPUには100億を超える膨大な数のトランジスターが集積されて動いています。そこでは、ひとつひとつの電子の運動が主役です。そして電子の運動を理解して制御できるようになったのは、同じく20世紀に確立された量子力学が寄与しています。その量子力学は約100年前、応用とは無縁にマックス-プランクらが自然法則を探究する過程で生まれたものです。
上記は基礎研究が私たちの世の中を変えた一つの典型例ですが、皆さんがこれから志す理学とはまさにそういう学術分野です。真理を探究する理学は、現代社会を支える科学技術や文明の土台となるものです。そして土台を担うからこそ、理学における発見は、時に世界を変える大きなインパクトを持っています。
みなさんも、これから徐々に専門性を高める中で、先人の築いた知を吸収し学びつつも、自らの疑問や好奇心、発想を大切に、新しい知の創造に果敢に挑戦されることを願っています。
令和3年4月1日 北海道大学理学部長 網塚 浩