理学部長メッセージ

理学を志す皆さんへ

北海道大学理学部は,数学科,化学科,物理学科,地球惑星科学科,生物科学科・生物学専修,生物科学科・高分子機能学専修の5学科・6専修から構成されています。それぞれの学科は扱う対象も手法も大きく異なりますが,いずれの学科も第一義的には「純粋な好奇心」に基づき,自然界や数理における未解明の謎を解き明かしていくことを目指す点で共通しています。未知への好奇心が新たな発見・研究の原動力であり,私たちが最も大切にしているものです。この精神に基づき,北海道大学理学部では1930年の創立以来,多くの研究成果を生み出し,知の創造に貢献してきました。

理学の研究は一般には基礎研究と呼ばれます。直接的に応用を目指すものではありませんが,応用科学の進展には不可欠のものです。原理を探求する目的の基礎研究が,その後,応用技術として大きな発展につながる例も多く見受けられます。本学部の卒業生で,2010年にノーベル化学賞を受賞された鈴木章先生のクロスカップリング反応の研究などもその例です。応用につながるか否かに関わらず,純粋な好奇心から始まる全ての研究成果は,やがて知の体系に組み込まれ,人類共通の財産としてさらなる研究の発展の礎となります。

さて,2019年に起こったコロナパンデミックは,私たちの社会・経済活動に大きな影響を及ぼし,大学での学習・研究活動にも様々な制約をもたらしています。そのような状況の中で私たちは,以前の当たり前の生活へのありがたさを実感するとともに,理学に携わる者として,事実を冷静かつ客観的に受け止め,対応や解決方法を模索する科学者としての基本姿勢を試されているようにも思います。膨大な科学的知見の上に成立している現代社会では,そこに生じる複雑多様な社会的課題への対応にも科学の力が不可欠となっているのです。

時を超越した純粋な真理探究は理学の根源として揺るぎないものですが,現代を生きる科学者は社会的課題への解決にも重要な役割を果たすことが期待されています。理学部では研究者に必要な基礎的スキルを学びますが,その過程で培われる洞察力,思考力,コミュニケーション能力の素養は,将来基礎研究に従事するか否かに関わらず,私たちの社会を支える力となるものです。実際,理学部の卒業生は,実に広い世界で活躍しています。ぜひ私たちと一緒に理学を深めるとともにすそ野を広げ,よりよい未来をつくるために成長してまいりませんか。

理学部長プロフィール

1987年 北海道大学理学部物理学科 卒業
1989年 北海道大学大学院理学研究科博士課程 退学
1989年 北海道大学理学部助手
1995年 Van der Waals-Zeeman研究所(オランダ)(文部省在外研究員)
2000年 北海道大学大学院理学研究科 准教授
2005年- 同 教授

国立大学法人理学部長会議声明―未来への投資―