AI、環境、医療、エネルギーなど、現代社会の課題はますます高度化、複雑化しています。こうした時代には、学部での学びに加えて、より深い専門性と柔軟な思考力、そして国際的な視野を身につけることが、将来の可能性を大きく広げる鍵となります。
まだ入学したばかりで、将来の話は少し早いのでは…と思われるかもしれません。けれども、今から進路の選択肢を知っておくことは、これからの学びを考える上でも大きな助けになります。
理学部では、多くの学生が大学院(理学院・生命科学院・総合化学院)に進学し、自らの興味や関心を発展させながら、企業・行政・教育など幅広い分野で活躍しています。また、博士課程では、研究に専念できる経済的支援も整っています。より深く、より自由に、そしてより世界へと広がっていくための次のステップとして、大学院博士課程進学という選択を前向きにご検討ください。
進学は「専門家」への第一歩 ─ 博士課程で広がる理学系人材の可能性
現代社会では、知識や技術が高度化し、それに対応できる人材が求められています。理学部では卒業生の9 割近くが大学院に進学。
基礎から専門まで学んだ大学院進学者は、研究機関・企業・行政など多様な分野で活躍しています。とくに博士課程修了者は、独創的な発想と専門性で、未来の科学技術イノベーションをけん引する存在として、社会から大きな期待が寄せられています。

(その他は留学生の帰国、起業等準備、資格試験受験準備、就活など)
研究に打ち込める環境を ─ 博士課程学生への支援制度の紹介
北海道大学では、博士課程学生を対象とした多様な経済的支援制度 が整備されています。例えば日本学術振興会特別研究員やEXEX 博士 人材フェローシップなど、生活費や研究費を支給する制度があります。 こうした制度により、博士課程全体のうち半数程度の学生が、給付型 の経済支援を継続的に受けており、安心して研究に専念しています。
また、授業料・入学料の減免制度や、TA(ティーチング・アシスタント)・RA(リサーチ・ア シスタント)など、学内で提供されている支援制度も併用が可能です。これらは重複して申請 できるものが多く、うまく組み合わせることで、授業料等の負担を抑えながら、生活費や研究 費を安定的に確保できる環境を整えることができます。

在籍者数は350人程度
北海道大学EXEX 博士人材フェローシップとは:博士課程学生が研究に専念できる環境を提供する 支援制度で、「未来社会の開拓者」の育成を目的としています。高度な専門知識に加えて、他者と 協働するための展開力、新しい社会や産業を構想するデザイン力、そして世界や地域が抱える多様 で複雑な問題に、持続可能な将来像をもって取り組む総合力を育むことをめざしています。 対象:博士課程、支援額:研究奨励費月額180,000 円 研究費年間400,000 円 。その他、申請 により研究費の追加支給あり。
大学院 理学院
未知への好奇心が、社会を変える力になる ─ 基礎科学を深める理学院
理学は、自然界に潜む法則や現象を科学的手法で解明する学問です。 理学院は、数学・物性物理・宇宙理学・自然史科学の4 専攻から成り、 自然の本質を追究する基礎研究を通じて、論理的思考力と科学的洞察 力を育みます。
修士課程では約130 名の教員が在籍し、1学年の学生数は教員数とほ ぼ同程度。博士課程でも1学年約60 名と、学生一人ひとりに対する丁 寧な指導が行われています。幅広い分野に対応した教育と柔軟な研究 環境が整い、科学リテラシーや社会に伝える力(科学コミュニケーショ ン)も育成されます。
近年では、理学出身の博士人材が、AI・データサイエンス・半導体・金融・ 教育・政策など多様な分野で活躍。博士号は社会のさまざまな課題 に貢献する「知の力」として注目されています。理学院は、好奇心を 原動力に学びを深め、社会に還元する人材の育成をめざしています。
大学院 生命科学院
命と向き合い、未来を創る ─ 学際性と国際性を備えた高度人材育成の場
生命科学院は、理学部生物科学科や薬学部をはじめ、農学部・水産 学部・他大学など多様な学生が集う学際的な大学院です。生命科学 専攻、臨床薬学専攻、ソフトマター専攻の3 専攻を擁し、基礎から応 用まで幅広い領域を横断的に学ぶことができます。
研究指導は複数教員制で、修士課程では教員と学生が1 対1に近い密 な関係を築ける少人数体制です。生命倫理や知的財産、英語での発 信力育成などもカリキュラムに組み込まれており、研究能力に加え、 社会で活躍するための総合力を育みます。
また、国内外から多くの留学生が在籍しており、日常的に異文化と接 しながらグローバルな視野を育てることができる点も大きな特長です。 海外での研究活動を経験する学生も増えています。卒業後は、研究職 に限らず、製薬、食品、環境、化粧品、行政、教育、国際NGO など、 さまざまな分野で多くの修了生が活躍しています。
大学院 総合化学院
化学の力で、社会をより良く ─ 理学と工学をつなぐ総合化学院
化学は、私たちの生活を支える「見えないインフラ」とも言える存在 です。総合化学院は、理学部化学科と工学部応用化学科の教員が連 携して運営する、全国でも珍しい「総合化学」の大学院として2007 年に設立されました。
物理化学・有機化学・無機化学・生物化学などの基礎に加え、プロ セス化学や応用化学といった幅広い分野を自由に学べるカリキュラム が整っています。卒業生の約8 割が大学院に進学しており、修士・博 士課程を通じて高度な専門性と研究力を育んでいます。
教育は、理学・工学両研究院や、触媒科学研究所、電子科学研究所 などの第一線研究者が担当。博士課程では、理研や産総研などの外 部研究機関とも連携しています。さらに、短期留学、国際プログラム、 留学生との共同研究など、国際性を育てる機会も充実。物質科学と社 会を結ぶ実践力を備えた人材を育成しています。
三つ折りパンフレットのPDF(6.5MB)
パンフレットのデザインについて
このパンフレットの背景に描かれている「飾らない花々」は、それぞれ異なる魅力や可能性をもつ学生一人ひとりを象徴しています。多様な個性が集い、共に学び、成長していく…そんな理学部の姿を重ねています。このイメージは、理学部のロゴマーク「六華(りっか)」にも通じています。「六華」は、中谷宇吉郎博士の「人工雪誕生の地の碑」をモチーフに、理学部エリア(大野池前)に設置された石碑を図案化したものです。理学部の6つの専修が、それぞれの知を結晶させ、彩り豊かな知の世界を共同で築いていく姿を表現しています。知的好奇心から始まる探究心、多様な個性の交わり、そして社会へとつながる理学の力─今、この時代にこそ、その力が必要とされています。