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小惑星リュウグウ岩石は氷を十億年も持っていた!地球の材料天体に従来見積もりの2〜3倍の水があった可能性

【ポイント】

  • リュウグウ岩石試料のルテチウム-ハフニウム同位体分析により、リュウグウの母体となった小惑星が誕生してから10 億年以上後に、その内部から水が流れ出たことが分かりました。
  • この水の流出は、リュウグウ母天体の炭素質小惑星に別の天体が衝突した際、小惑星内部に含まれていた氷が溶けたことで起きたと考えられます。
  • 本研究の結果は、地球の材料となった炭素質小惑星が、含水鉱物に加えて、氷として水を含んでいたこと、そしてこの水の総量は従来推定値の2~3 倍になることを示唆します。

【概要】
東京大学の飯塚毅准教授らの研究チームは、炭素質小惑星が10 億年以上も氷を保持していた証拠を、リュウグウ岩石試料に発見しました。炭素質小惑星は、45.6 億年前に太陽系の外側で氷、有機物、鉱物の塵が集積することで誕生し、その一部が後に太陽系の内側に移動して地球に水や炭素などの揮発性物質をもたらしたと考えられています。これまでの研究により、炭素質小惑星の誕生から数百万年の間に、氷が溶けてできた水が岩石と反応し、含水鉱物ができたことが知られていました。しかし、その後の太陽系史における炭素質小惑星の水の挙動は未解明でした。本研究では、はやぶさ2がリュウグウから持ち帰った岩石試料のルテチウム-ハフニウム同位体を分析することにより、炭素質小惑星の誕生から10 億年以上後に、氷が溶けて水が流れ出たことを明らかにしました。この水の流出は、リュウグウの母体となった炭素質小惑星に別の天体が衝突したことで引き起こされたと考えられます。本研究の結果は、地球に集積した炭素質小惑星が、水を含水鉱物だけでなく氷として保有していたこと、そしてこの水の総量はこれまでの推定量の 2~3 倍であったことを示唆します。

【論文情報】
Iizuka, T., Shibuya, T., Hayakawa, T. et al. Late fluid flow in a primitive asteroid revealed by Lu–Hf isotopes in Ryugu. Nature (2025).
DOI:10.1038/s41586-025-09483-0
URL:https://www.nature.com/articles/s41586-025-09483-0

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