小惑星ベヌーは多様な原材料物質から形成~NASA探査機が持ち帰ったサンプルから明らかに~

【ポイント】
- NASAの小惑星探査機「オサイリスレックス」が持ち帰った小惑星「ベヌー」サンプルを詳細分析。
- 「ベヌー」は多様な起源を持つ原材料物質から形成された。
- 小惑星「リュウグウ」と同じく、「ベヌー」は太陽系の遠方領域で形成された可能性を示唆。
【概要】
北海道大学大学院理学研究院の川﨑教行准教授、馬上謙一助教及び圦本尚義教授、同大学総合イノベーション創発機構の坂本直哉准教授を含む国際共同研究グループは、米国航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機「オサイリスレックスOSIRIS-REx」が小惑星「ベヌー」から採取したサンプルの詳細分析を行い、「ベヌー」が非常に多様な起源を持つ原材料物質から形成されたことを明らかにしました。
「オサイリスレックス」は、2023年に「ベヌー」の表面から約120グラムのサンプルを地球に持ち帰ることに成功しました。「ベヌー」は、日本の宇宙航空研究開発機構の小惑星探査機「はやぶさ2」が探査した「リュウグウ」と同じく炭素質の小惑星ですが、「ベヌー」の起源や、両小惑星の関係には不明な点が多く、実サンプルの詳細な分析が求められていました。
本研究では、「オサイリスレックス」の初期分析プロジェクトとして、「ベヌー」のサンプルの化学・鉱物・同位体分析を実施しました。そして「ベヌー」は、太陽の前世代の恒星を起源とする鉱物や、太陽の近傍の高温環境(1,000℃以上)で生成された鉱物、また太陽系の遠方領域などの低温環境で生成された氷や有機物といった、多様な原材料物質から形成されていることが明らかになりました。このことは「ベヌー」の原材料物質の生成環境の幅広さを物語っており、初期太陽系において物質の大規模な移動と混合があったことを示しています。
このような原材料物質の特徴は「リュウグウ」及び同型の隕石(イヴナ型炭素質隕石)と類似したものです。「ベヌー」は、「リュウグウ」と同じく、太陽系の遠方領域で形成された可能性が示唆されます。今後のより発展的な分析により、両小惑星の起源及び進化過程の共通性と特異性が解明され、初期太陽系で惑星が生まれる様子が明らかになるものと期待されます。
なお、本研究成果は、2025年8月22日(金)、Nature Astronomy誌にオンライン掲載されました。
論文名:The variety and origin of materials accreted by Bennu’s parent asteroid(ベヌーの母天体に集積した物質の多様性と起源)
URL:https://doi.org/10.1038/s41550-025-02631-6
プレスリリースはこちら