北海道中川町で化石を含む琥珀を大量発見~世界的にも希少な太古の陸上生態系の記録~

【ポイント】
- 多様な生物化石群を保存する1億1,500万年前の琥珀を北海道北部中川町から発見。
- 琥珀内の植物・昆虫・菌類などの化石には微細な解剖学的特徴まで観察可能。
- 陸上生態系の変革期にあった前期白亜紀の生物の進化史や生態の解明に期待。
【概要】
北海道大学大学院理学研究院の伊庭靖弘准教授、大阪公立大学大学院理学研究科の久保田彩講師、エディンバラ大学の谷口 諒JSPS海外特別研究員、中川町教育委員会の疋田吉識教育長は、北海道北部の中川町で産出する約1億1,500万年前(前期白亜紀)の琥珀が多様な生物化石群を保存していることを明らかにしました。
琥珀は樹木から分泌された樹脂が化石化したもので、取り込んだ生物を化石として極めて良好に保存する媒体として知られています。太古の森林に由来する琥珀とその内部に保存された化石は、当時の陸上生態系を高解像に復元するための材料として注目を集めてきました。ところが、化石を含む琥珀が大量に産出することは稀で、その記録も後期白亜紀(1億年前)以降に集中しています。そのため、より古い時代の生物相や進化イベントに琥珀からアクセスするのは困難という現状があります。
今回研究対象とした中川町の琥珀は、今から約1億1,500万年前に深海で堆積した地層に大量に含まれていました。採集した琥珀サンプルからは植物、昆虫、菌類など多様な化石が発見されました。これらの化石にはµmスケールの微細な構造まで精細に保存されており、古生物学・分類学的に重要な情報に富んでいます。本研究で確認された中川琥珀の高い化石保存ポテンシャルは、最も優れた化石保存媒体である琥珀の前期白亜紀及びアジア地域における乏しい記録を埋め、被子植物の放散など劇的な変化が生じていた時代の陸上生態系の復元に貢献すると期待できます。
なお、本研究成果は2025年9月15日(月)公開のCretaceous Research誌にオンライン掲載されました。
論文名:A new amber Lagerstätte from the Lower Cretaceous of Japan(日本の下部白亜系から発見された琥珀化石鉱脈)
URL:https://doi.org/10.1016/j.cretres.2025.106236
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