有機反応論研究室

生体分子を凌駕する分子創生を高速有機化学の力で(工学からのサイエンスのブレイクスルーを目指して)

研究内容

フラッシュケミストリー

マイクロ合成化学分野における研究を世界に先駆けて推進してきました。内部の大きさがマイクロメートルオーダーの反応器(フローマイクロリアクター)を使って、反応時間数秒以下の高速反応を制御して行うものです。マイクロ空間は分子拡散距離が小さい、容積あたりの表面積が大きいといった特長を有するため、マクロ空間(フラスコ) では制御困難な反応を精密に制御できます。フラスコ化学の常識を覆す新手法や新反応の開発により、望みの有機分子だけを選択的に、しかも高速に合成する化学「フラッシュケミストリー」の学術体系の構築をめざし研究を進めています。

高速有機化学による機能性分子の高速創生

フラッシュケミストリーからの新たな展開として、生物機能分子創生のためのマイクロ合成化学分野の構築に挑戦しています。 機能性分子の合成・創生の中核を担う有機化学の発展は、個人の便利で豊かな生活や健康を支え、高付加価値産業として経済発展を通し、社会に大きく貢献してきました。優れた機能性分子をいかに速やかに世に送り出すか、そのための「どの様な反応で、どの様な反応空間で、どの様な生物機能分子を」という3つの着眼点のもと、統合的な合成化学の発展、合成化学全般の高速化に特化した研究をおこなっています。フロー反応場の特性を活かした反応集積化の展開に加え、機械学習などのデータサイエンスと融合した反応探索の理論構築により、フラスコ化学の常識を覆す全く新しい合成化学の学術基盤の確立、そのための基本概念の創出を目指します。データサイエンスだけでなく、ケミカルバイオロジーやマテリアルサイエンスとの異分野融合を図り、生体分子を凌駕する機能性分子の高速創生のための高速合成化学の実現に日々取り組んでいます。

酵素の力を制御して天然物質をつくる

私たちは、生物が利用する触媒である「酵素」に注目し、酵素を活用した有機化合物の“バイオ合成”を目指して研究を進めています。特に、麹菌を宿主とした異種宿主発現では世界をリードしており、全合成例のない複雑な化学構造を有する天然物のバイオ合成にも成功しています。最近では、酵素の機能を化学的に解明・理解・制御することで、化学合成のように思い描いた分子をつくることにも成功しつつあります。私たちが用いている手法は、カーボンニュートラルな社会を実現するための基盤技術としても注目をあつめています。

フラッシュケミストリー(時間を空間で制御する化学)
反応集積化
 

研究室の特徴

私たちの研究室では、マイクロ合成化学分野における最先端の研究に携わることができます。フローマイクロリアクターを使った研究は、実験作業と試行錯誤の連続です。研究活動を通じて探求する喜びを経験し、一人前の研究者になってほしいと考えています。また、フロー合成は様々な産業界で今後ますます活用される分野であり、現在も多くの企業との共同研究を実施しています。研究成果の社会還元にも力を入れています。自分たちの研究成果が社会のニーズに応えるということを実感する機会が多く持てる研究室です。