無機化学研究室

蓄電池を革新する固体イオニクス材料

研究内容

新規固体イオニクス材料の探索と次世代蓄電池への応用

蓄電池は、固体内のイオン伝導によって電気が流れる、固体イオニクス材料によって成り立っています。つまり、新たな固体イオニクス材料の発見は、新たな蓄電池の提案に繋がる可能性があると言えます。我々の研究室では、キャリアイオンにナトリウムイオンやマグネシウムイオンを用いた、新たな固体イオニクス材料の探索を通じて、リチウムイオン電池に代わる革新的な次世代蓄電池の提案を目指しています。

複合金属酸化物の相関係と低温合成プロセスの開発

多くの固体イオニクス材料は、800 °Cから1000 °C程度の高温で結晶成長します。これは、酸化物等の固相内で金属イオンが拡散するには、高いエネルギーが必要であるからです。我々は酸化物の合成反応過程における、中間生成物の同定や結晶成長機構の解析を行い、より低温で結晶性の高い固体イオニクス材料を得るための、新しい合成プロセスの開発を行っています。

卑金属電析における結晶成長機構の理解とその制御

最初の蓄電池である鉛蓄電池が発明されて、150年以上の年月が過ぎましたが、過去に金属の溶解析出反応を利用する蓄電池の実用化が成功したという例はありません。これは、多くの金属が電気化学的に還元される際に、均一に析出することなく、セルの短絡を引き起こすからです。我々は金属マグネシウムが、極めて平滑な表面形態を示すという特徴に着目し、電析における金属の表面形態を決定づける因子の解明と、結晶成長プロセスの制御に挑戦しています。

Ca置換により高電位での可逆性が向上したP3型層状正極活物質
高い可逆性を示すMg3Bi2金属間化合物負極の電気化学特性と、結晶構造内でのMg2+イオン導電パスBVS法による可視化
ガーネット型リチウムイオン伝導体Li7La3Zr2O12の可逆な相転移に伴う電気伝導度の変化
上段:同じ測定条件で析出したリチウムとマグネシウムの比較・下段:析出初期段階のマグネシウムの均一核生成の様子

研究室の特徴

蓄電池の特性は、電極設計やセル作製プロセスに大きく依存します。したがって、蓄電池のChemistryを正しく理解するには、これらのセル作製に関するノウハウが必須となります。我々のグループでは、これまでの研究で培った材料に関する知見と、適切な評価・解析に必要なTechnologyを駆使して、次世代蓄電池を実現する上で材料の持つ本質的な課題を暴き、その課題解決に向けた新材料の提案を目指します。