研究ニュース

世界最長の炭素炭素結合は長いだけではなかった!結合の柔軟性が生み出す新機能により未踏機能材料開発への貢献に期待

【ポイント】

  • 光/熱によって炭素-炭素単結合が5%も伸縮することを発見。
  • 前例のない結合の伸縮によって,酸化特性の大幅な変調も同時に達成。
  • 結合の伸長,収縮,形成,切断の全てが結晶状態で進行し,結合の「柔軟性」を実証。

【概要】

北海道大学大学院理学研究院の石垣侑祐助教,島尻拓哉氏及び鈴木孝紀教授の研究グループは,光/熱で分子構造を相互変換させることで,炭素-炭素単結合が伸縮することを明らかにしました。炭素-炭素結合は剛直であることから,通常このような伸縮挙動を観測することはできません。

本研究に先立って研究グループは,世界一長い炭素-炭素単結合の創出を目指して研究に着手し,2018年に1.8Å(オングストローム)を超える結合の存在を世界で初めて実証しました。これは,標準結合長(1.54Å)より17%も長く,結合の限界として予測された値を超えることから,研究グループは「超結合(hyper covalent bond)」の概念を新たに提唱しています。

今回の研究では,このように長い結合をもつ分子に光を照射することで,近接した二重結合同士が環化してかご型構造を形成することを利用しました。この光環化は溶液中及び結晶状態のいずれにおいても定量的に進行し,結果として中央の炭素-炭素単結合が収縮することを見いだしました。また,結晶状態において熱による逆反応が定量的に進行し,長い結合をもつ分子が再生することも明らかにしています。詳細な構造解析が可能な単結晶を用いて,中間状態の解析を行うことで,直接的に結合の伸縮挙動を観測することに成功しました。

このような結合の伸縮過程を可視化した例はなく,共有結合を極限まで伸長したことで結合エネルギーが小さくなり,結合の”柔軟性”の獲得によって発現した新たな現象といえます。さらに,光環化によって物性も大きく変化し,化合物によっては1V以上も酸化電位が変化することを明らかにしました。これにより,極度に伸長した結合の”柔軟性”に基づく新たな機能付与を実現しました。

なお,本研究成果は,2020年9月30日(水)公開のAngewandte Chemie(Angewandte Chemie International Edition)誌に掲載されました。

 

詳細はプレスリリースをご覧ください。

◆関連プレスリリース:「世界一長い!炭素-炭素結合」の創出に成功(2018年3月)