研究ニュース

共振場を利用したイオン伝導の限界打破に成功高効率なエネルキーテイスへの展開に期待

【ポイント】

  • 振動強結合という現象を利用して水に分子相関を導入し、動的水和ネットワークの制御に成功。
  • 電解質水溶液のプロトン伝導度の一桁以上もの向上に成功し、イオン伝導体の新設計指針を提案。
  • 水電解デバイス、電池などの電気化学エネルギー変換の効率化に期待。

(右:今回実証した振動強結合下でのプロトン伝導促進の概念図)

【概要】
北海道大学大学院理学研究院の福島知宏講師、村越 敬教授らの研究グループは、振動強結合と呼ばれる量子光学の原理を応用することにより、電解質水溶液のイオン伝導度を最大で一桁以上向上させることに成功しました。

このことは、水の物性改革に基づく諸物性の制御を可能とする新手法の提案であり、電気化学デバイスにおける効率的なエネルギー変換に直結する応用展開も可能となります。

これまでに研究グループでは、2枚の反射ミラーが向かい合う共振器においては、共振器のエネルギーと水の分子振動のエネルギーが相互作用することにより、水分子間に協同的な相互作用を誘起可能なポラリトン状態の形成を見出してきました。しかしながら、水の動的物性にどのような影響が有るかに関しては不明な点が数多く残されていました。

今回、研究グループは水の中でプロトンをバケツリレーのように受け渡す「プロトン伝導」に着目しました。電気化学手法を用いて振動強結合状態での水の物性を調査した結果、一桁以上ものプロトン伝導の向上に加えて、誘電率の上昇を世界で初めて観測しました。さらには、種々の電解質水溶液において、イオン伝導度が制御可能であることを実験的に示しました。

この成果は、従来不変とされてきた水の動的物性を制御可能であることを示すものであり、プロトン伝導や水和イオンの反応性制御へと応用することにより、電解デバイスにおけるエネルギー損失を低減可能という点において重要な実験的成果です。

なお、本研究成果は、2022年6月23日(木)公開のJournal of the American Chemical Society誌にオンライン掲載されました。

論文名:Inherent Promotion of Ionic Conductivity via Collective Vibrational Strong Coupling of Water with the Vacuum Electromagnetic Field(真空場と水の協同的振動強結合によるイオン伝導の促進)
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.2c02991

 

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