研究ニュース

マグネシウム電池の劣化挙動を解明

【ポイント】

  • 資源制約フリーな次世代蓄電池「マグネシウム電池」の正極側の分解反応を解析。
  • 電解液に含まれる微量の水分が電池部材の腐食や正極の溶出などを促進することを解明。
  • 水分の厳密な管理で電池の高エネルギー動作が実現可能。

【概要】
北海道大学大学院理学研究院の朱 瑞傑博士研究員、小林弘明准教授らの研究グループは、次世代蓄電池の一つ「マグネシウム電池」の課題解明に成功しました。

現在主流のリチウムイオン電池に代わる次世代の蓄電池として、資源的制約のないマグネシウム電池の研究開発が進められています。実用化にはマグネシウム電池の高エネルギー化が必須であり、近年開発された弱配位性アニオンを有するマグネシウム塩を用いたエーテル系電解液が注目されています。この電解液を用いることで、マグネシウム金属負極側の反応が効率よく進行しますが、一方で酸化物正極側の反応に対しては可逆性が悪く、低可逆性を示す原因の解明及びこの電解液に適用可能な正極材料の創出が求められています。さらに、電解液のロットや電池を作製する環境によって正極の性能が大きく変化する問題があり、実験の再現性に支障をきたしていました。

今回、マグネシウム電池の正極と電解液の界面で起こる反応について詳細に調べたところ、電解液中に微量に含まれる水分が劣化挙動の主原因であり、電解液成分の酸化分解だけでなく、集電体や電池部材に用いる金属の腐食、正極の溶出を促進することが分かりました。

電解液への水分混入の抑制はリチウムイオン電池においても重要ですが、今回の知見からマグネシウム電池の電解液はより注意深く水分量を管理することが実験結果の再現に重要であることを意味しています。一方で、低水分量の電解液を使用することで、高電圧充放電サイクルが可能であることを見出しており、水分混入を恒常的に抑えることでマグネシウム電池の高エネルギー動作の実現が期待できます。

本研究成果は、2025年5月19日(月)公開のAdvanced Energy Materials誌に掲載されました。

論文名:Decoding Cathode-Electrolyte Interface Issues in Conventional Ethers Electrolytes-Based Magnesium Rechargeable Batteries(従来のエーテル電解液を用いたマグネシウム蓄電池における正極/電解液界面の課題解明)
URL:https://doi.org/10.1002/aenm.202502050

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