研究ニュース

青色LED光で駆動するクロスカップリング反応を開発医薬品などの効率的で持続可能な合成法として期待

【ポイント】

  • 青色LEDの光によって促進される画期的な触媒反応を開発。
  • 安価な銅を分子触媒の金属成分とすることで環境負荷やコストの低減を実現。
  • 医薬品や光電子材料の新しく効率的な合成法として期待。

【概要】
北海道大学大学院理学研究院・同大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の澤村正也教授らの研究グループは,入手容易な青色LEDの光によって駆動する画期的なクロスカップリング反応を開発し,安価な銅で構成される分子触媒を用いて有用化合物を効率よく合成することに成功しました。

持続可能な社会の実現に向けて,再生可能エネルギーである太陽光の有効利用は人類の最重要課題の一つです。こういった背景のもと,近年,光を利用した化学反応が盛んに研究されています。しかし,従来の方法の多くは,人体に有害な紫外光や光を効率よく吸収するための高価な貴金属の添加剤(光触媒と呼ばれる)を用いる必要がありました。また,クロスカップリング反応は医薬品や光電子材料といった私たちの身の回りの化成品を合成する上で不可欠な技術ですが,このクロスカップリング反応においても,多くの場合パラジウムなどの貴金属を用いる必要がありました。

研究グループは,銅を中心とする分子触媒を光によって活性化する革新的な手法で上述の課題を一挙に解決しました。銅は地球上に豊富に存在する安価な金属です。銅触媒が入手容易な青色LEDの光を直接吸収することで反応が進行するため,外部の添加剤を必要とせず,コストや地球環境の観点から極めて優れた化学反応です。この技術を活用することで,従来の貴金属に頼った化学反応を刷新し,持続可能な社会の実現に大きく近づくことが期待できます。

なお,本研究成果は,2022年1月6日(木)公開のJournal of the American Chemical Society誌に掲載されました。

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