研究ニュース

DNAメチル化は環境ストレス活性型トランスポゾンを正に制御するトランスポゾン宿主の巧みな生存戦略を理解するうえでの新しい知見

【ポイント】

  • DNAのメチル化を介したトランスポゾンの制御機構に新たな展開。
  • DNAのメチル化はトランスポゾンの活性化を負にも正にも制御。
  • 多様なDNAメチル化の役割についての研究が進むことを期待。

(図:野生型(WT)では,ONSEN領域のCMT3がCMT2の結合を抑制する。cmt3変異体でCMT3の機能を喪失すると,CMT2を介してCHHのメチル化が増加する。熱ストレス(HS)を受けると,熱ショック因子(HSF)によってONSENの転写が活性化される。cmt2変異体では,CHHのメチル化とH3K9me2レベルが低いため,熱ストレス下でのONSENの転写量が増加する。)

【概要】

北海道大学大学院理学研究院の伊藤秀臣准教授の研究グループは,ウィスコンシン大学のシュエファ・ジョン博士らとの国際共同研究で,環境ストレスで活性化する転移因子(トランスポゾン)の新しい制御機構を明らかにしました。

研究グループは,モデル植物であるシロイヌナズナを37℃の高温条件で育てると目を覚ます,トランスポゾン「ONSEN」に着目しました。ONSENは普段は眠っている(発現していない)のですが,高温条件下で目を覚まし(転写が活性化し)ます。本研究では,DNAのメチル化を担う酵素の変異体をもちいて,ONSENの転写活性を解析しました。その結果,予想に反してDNAメチル化酵素の変異体でONSENの転写量が減少しました。この現象は一般的なDNAメチル化の役割とは一見,逆の作用であり,ONSENは一般的なトランスポゾンと異なり,DNAのメチル化を自らの転写抑制に対する防御機構として利用していることになります。

本研究で得られた結果は,長年考えられてきたトランスポゾンと宿主のせめぎ合いについての新しい現象と考えられ,両者の巧みな生存戦略を理解するうえでの新しい知見を得ることができました。

なお,本研究成果は,2021年8月20日(金)午前4時公開のPLOS Genetics誌に掲載されました。

 

詳細はプレスリリースをご覧ください。

◆ 伊藤秀臣准教授による解説はこちら