研究ニュース

明治初期以降に日本に上陸した台風の変化を解明ペリー艦隊の航海記録から江戸時代に日本に接近した台風経路も正確に復元

【ポイント】

  • 明治10(1877)~令和元(2019)年に日本に上陸した台風の数・強さ・上陸地点を初めて解明。
  • 台風の上陸数,強度は近年増加傾向であるが,数十年周期の変動の一部である可能性を示唆。
  • 台風災害に備えるために,約100年周期で変動する台風への視点も重要。

【概要】
北海道大学大学院理学研究院の久保田尚之特任准教授,東京都立大学都市環境科学研究科の松本 淳教授,成蹊大学経済学部の財城真寿美教授,神戸大学大学院国際文化学研究科の塚原東吾教授,東京都立大学の三上岳彦名誉教授らの研究グループは,明治10(1877)~令和元(2019)年に日本に上陸した台風の数や上陸地点を初めて明らかにしました。この解析には,台風経路データや,気象台と灯台で観測した気象データを復元し,期間を通して同じ台風の定義を用いました。

本研究の結果,台風上陸数は2014年以降多く,20世紀後半は上陸数が少ない傾向にあり,それ以外の期間は19世紀も含めて多くなっていますが,長期増加傾向は見られませんでした。上陸台風の強度は,1990年代後半以降強くなっていますが,昭和の4大台風に匹敵する強さの台風の上陸は近年もありません。上陸地点は1970年代以降北東方向に変化し,東日本,北日本に多く上陸する傾向が見られますが,約100年周期で北東方向と南西方向に変化していることがわかりました。

さらに,日本の気象台での公式な気象観測が始まる前の江戸時代末期に日本に接近した台風について,日本に来航した外国船の航海日誌に記録された気象データを入手して調査しました。今回はアメリカ海軍ペリー艦隊の航海日誌を用いて,1853年7月に沖縄近海を通過した台風経路を明らかにしました。外国船の航海日誌に記録された気象データを利用して江戸時代に日本に接近した台風経路を正確に復元したのは初めてで,江戸時代の気候解明に有効なデータであることを初めて示しました。

なお,本研究成果は,2021年2月5日(金)公開のClimatic Change誌に掲載されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。