地震時に断層でセラミックスが作られる!? ~焼結した岩石が断層強度回復や地震エネルギーに与える影響の解明~
【ポイント】
- 台湾の活断層から焼結した岩石(天然セラミックスの一種)を発見
- 地震時に断層では粉砕と溶融が起きると考えられてきたが、焼結現象が起きることを新たに確認
- 焼結現象は断層の強度を回復させるため、断層の活動性評価への更なる進展が期待
【概要】
大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻の廣野哲朗 准教授、同研究科附属熱・エントロピー科学研究センターの宮崎裕司 准教授、海洋研究開発機構高知コア研究所の石川剛志 所長、北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学部門の亀田 純 准教授らの研究グループは、地震時に断層内の焼結現象で一種の天然セラミックスが生じ、これが断層の強度回復や地震エネルギーに大きな影響を与えることを世界で初めて明らかにしました。
焼結とは、粉末状の固体の集合体を融点よりも低い温度で加熱したときに、粒子が互いに結合する現象で、陶器や磁器などのセラミックスが形成されるときに生じる現象です。これまで地震時に断層では、摩擦滑りにともなう鉱物の粉砕化と溶融が主に起きると考えられており、焼結がおきることについては指摘されていませんでした。
今回、廣野准教授らの研究グループは、1999年に台湾集集地震を引き起こしたこともあるチェルンプ断層の試料をナノスケールで分析した結果、焼結によって生成した断層岩を発見しました。さらに、複数の鉱物集合体(石英、長石、粘土鉱物)を室内実験にて加熱したところ、緑泥石という粘土鉱物が焼結助剤として機能していることを見出しました。さらに焼結現象は岩石の強度を高め、かつ表面積の減少によるエネルギーの放出をともないます。これらの新しい知見により、プレート境界断層や活断層が地震時に歪みを解放して、強度を失った後、どのように強度を回復させ、次の地震を引き起こすのかというメカニズムの理解、そして断層の活動性の推定への展開が期待されます。
本研究成果は、英国Nature社が刊行する学術雑誌「Communications Earth & Environment」に、8月14日(金)に公開されました。
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