研究ニュース

高圧下における水素結合の対称化の直接観察に成功地球深部で含水鉱物の高圧相に起きる物性変化の原因を解明

  • 含水鉱物の高圧相であるδ-AlOOHについて、地球深部に相当する高圧環境下で水素結合に関連すると考えられる物性の変化が起きることが報告されていましたが、その原因については議論がありました。
  • 中性子実験によりδ-AlOOHの水素位置の圧力変化を観測し、水素原子が二つの隣接する酸素原子間の中点に存在するようになる「水素結合の対称化」が高圧下で起きることを初めて実証しました。
  • わずかな水素位置の変化が鉱物のマクロな物性の変化をもたらすことを示しており、今後、含水鉱物の物性に基づき地球深部の水素の存在量などを議論する場合は、水素結合の結合様式の圧力変化の影響を考慮する必要があると考えられます。

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長児玉敏雄,以下「原子力機構」という。)JPARCセンターの佐野 亜沙美 研究副主幹らの研究グループは,東京大学大学院理学系研究科の小松 一生 准教授,鍵 裕之 教授,北海道大学大学院理学研究院の永井 隆哉 教授およびオークリッジ国立研究所との共同研究で,大強度陽子加速器施設J-PARCの物質・生命科学実験施設(以下「MLF」という)にある超高圧中性子回折装置PLANETおよび米国パルス中性子源SNSの高圧下パルス中性子回折装置SNAPを用いて,含水鉱物の高圧相であるδ-AlOOHの高圧下中性子回折実験を行いました。その結果,18万気圧(地下約520km相当)という高圧下において,水素原子が隣り合う二つの酸素原子間の中心に位置する「水素結合の対称化」が起きることを初めて直接観測しました。

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長児玉敏雄,以下「原子力機構」という。)JPARCセンターの佐野 亜沙美 研究副主幹らの研究グループは,東京大学大学院理学系研究科の小松 一生 准教授,鍵 裕之 教授,北海道大学大学院理学研究院の永井 隆哉 教授およびオークリッジ国立研究所との共同研究で,大強度陽子加速器施設J-PARCの物質・生命科学実験施設(以下「MLF」という)にある超高圧中性子回折装置PLANETおよび米国パルス中性子源SNSの高圧下パルス中性子回折装置SNAPを用いて,含水鉱物の高圧相であるδ-AlOOHの高圧下中性子回折実験を行いました。その結果,18万気圧(地下約520km相当)という高圧下において,水素原子が隣り合う二つの酸素原子間の中心に位置する「水素結合の対称化」が起きることを初めて直接観測しました。

圧力による水素結合の対称化は、約半世紀前の理論による予言以来、その存在を証明するため様々な研究がなされてきました。しかし先行研究は間接的な手法にとどまっており、直接的な証拠はまだ得られていませんでした。今回大強度のパルス中性子を用いた回折実験によって初めて、高圧下における水素位置を決定し、対称化を直接観察することに成功しました。

本研究により、δ-AlOOHで見つかっていた物性の変化は高圧下の水素結合の対称化と、その低圧側で新たに見つかったディスオーダー状態により引き起こされていることが明らかになりました。水素結合の対称化にともなう水素位置の変化はごくわずかですが、結合様式の変化によって鉱物全体のマクロな物性変化を引き起こすことを示しています。

本結果は2018年10月19日18時(現地時間10時)に英国科学雑誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。

 

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