研究ニュース

台湾東部で誘発地震の促進メカニズムを発見字型構造をなす断層のずれる「向き」重要性

【ポイント】

  • 台湾東部で発生した玉里地震による地面の動きを衛星観測で捉え、地震時の断層の動きを推定。
  • ハの字型構造をなす2断層系では、片方の断層のずれる方向が他方の地震の誘発に強く影響。
  • 特に片方で逆断層型の地震が発生すると、他方の断層で地震が誘発されやすくなることを発見。

【概要】
北海道大学大学院理学研究院の高田陽一郎准教授と同大学大学院理学院博士後期課程の石丸雄理氏らの研究グループは、台湾東部に存在する「台東縦谷断層」と「中央山脈断層」における地震の誘発メカニズムを解明しました。これらの断層は隣接しており、互いに反対方向に傾くハの字型の構造をしています。従来、これらの断層の片方で地震が発生すると、もう片方の地震活動が抑制されると考えられていました。しかし、2022年に台東縦谷断層で玉里地震(マグニチュード6.7)が、中央山脈断層で池上地震(マグニチュード7.0)が相次いで発生し、従来の説の再検討が必要となりました。そこで、これら2断層間の相互作用を調べて、誘発地震を理解するための枠組みを再構築しました。

まず、人工衛星「だいち2号」とGNSSのデータを用いて玉里地震による地面の変形を高解像度で検出しました。その結果、玉里地震の断層運動が逆断層型(鉛直方向のずれ)であったことが明らかになりました。また、玉里地震の断層運動によって、隣接する中央山脈断層に加わる力が変化し、池上地震の際にずれが大きかった場所では断層が動きやすい状態になっていたことを示しました。

さらに、ハの字型の2断層系における数値シミュレーションを行い、片方の断層のずれる「向き」が、もう一方の断層での地震の誘発を促す重要な要因であることを明らかにしました。特に、玉里地震のように断層が鉛直方向にずれる場合には、もう一方の断層での地震を促進する力が働きますが、水平方向にずれる場合は抑制する力が働くことを示しました。この結果は、逆断層型の地震後には隣接する断層での地震活動に注意が必要であることを示唆します。さらに、断層がずれる向きによる効果を考慮して、台湾東部における1900年以降の地震活動の活発化と静穏化を説明しました。

なお、本研究成果は、2025年7月10日(木)公開のJournal of Geophysical Research: Solid Earth誌(固体地球物理学の専⾨誌) にオンライン掲載されました。

論文名:Strong Fault Interaction in Double-Vergence Structure: Lessons From the 2022 Yuli Earthquake and the 2022 Chihshang Earthquake, Eastern Taiwan(ダブルバージェンス構造における強い断層間相互作用:台湾東部で発生した2022年玉里地震及び2022年池上地震からの教訓)
URL:https://doi.org/10.1029/2025JB031225

プレスリリースはこちら