研究ニュース

フロー法によりカチオンアニオン直接反応に成功刹那の活性種発生による超高速な化学反応

【ポイント】

  • 異なる極性の不安定化学種であるカチオンとアニオンを別空間で発生し化学反応に活用。
  • フローマイクロリアクター中で超強酸を用い、カチオン種を最短0.02秒で発生。
  • 生体反応を志向した、複数の活性種が絡み合う複雑な化学合成への展開に期待。

【概要】
北海道大学大学院理学研究院の永木愛一郎教授、同大学大学院総合化学院博士後期課程の早乙女広樹氏(AGC株式会社所属)、同大学大学院理学研究院の芦刈洋祐特任助教らの研究グループは、フローマイクロリアクター内で別々かつ瞬時に発生させたカチオンとアニオンを活用し、0.07秒の超高速な反応に成功しました。

有機合成化学では化学反応によって医薬品や機能性材料を創出し、社会に提供しています。化学反応の速さは様々で、遅いものでは数日以上の時間を要するものもあります。長時間の化学反応にはそれだけ人的・設備的なコストが必要であるため、速やかに進行する化学反応が求められています。カチオンやアニオンといった化学種は反応性が高く、それぞれ高速な化学反応に利用できますが、カチオンとアニオンを同時に利用する超高速な化学反応は実現されていませんでした。これはカチオンやアニオンが不安定で分解しやすいことに加え、安定性や寿命の異なる複数の高反応性化学種を同時に取り扱うことができなかったためです。

研究グループは、流通型の反応装置であるフローマイクロリアクターを活用し、カチオンとアニオンを分割された空間内で発生させ、それらの分解前に反応させる収束的な手法により、カチオンとアニオンの直接反応に成功しました。この方法では、超強酸を用いることで、極めて反応性が高く短寿命のカチオン種を0.02秒、すなわち刹那の時間に発生させることができ、アニオンと反応させることで、0.7~6.0秒と極めて短時間で化学合成が可能です。

なお、本研究成果は、2024年6月13日(木)公開のNature Communications誌に掲載されました。

論文名:Convergent approach for direct cross-coupling enabled by flash irreversible generation of cationic and anionic species(超高速かつ不可逆的なカチオン種とアニオン種の発生を基軸とする収束的な直接クロスカップリング反応)
URL:https://doi.org/10.1038/s41467-024-48723-1

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