研究ニュース

2022〜2023 年に観測された地球エネルギー吸収の急増の要因解明 ――3年続いたラニーニャ現象からエルニーニョ現象への遷移がカギ――

【ポイント】

  • 2022年から2023年に観測された世界全体の平均気温の急上昇に寄与した、地球のエネルギー吸収の急増の要因を解明
  • 地球温暖化をもたらす人為起源の影響に加え、3年に亘って続いたラニーニャ現象が終息し直後にエルニーニョ現象へと遷移したことが鍵だったことを発見
  • 2022年から2023年の事例が特異な極端事例であったことを示すとともに、エルニーニョ現象やラニーニャ現象の気候変動における新たな重要性を示す

【概要】
東京大学先端科学技術研究センターの土田耕特任研究員と小坂優准教授、北海道大学大学院理学研究院の見延庄士郎教授の研究グループは、2022〜23年に観測された地球全体のエネルギー吸収(注1)の急増の要因を解明しました。
地球は太陽放射を吸収し、赤外放射を宇宙空間に放出することで、エネルギーのバランスを保とうとしますが、吸収が放出を上回る状態が持続すると地球温暖化をもたらします。本研究では、2022〜23年の地球エネルギー吸収の急増に対し、先行して3年続けて発生したラニーニャ現象の終息とエルニーニョ現象(注2)への遷移が、人為起源の影響に重なって重要な寄与をもたらしたことを発見しました。本研究は、エルニーニョ現象やラニーニャ現象の気候変動における新たな側面を描き出すとともに、世界規模の気温上昇や極端気象・気候現象の予測や要因説明に資する新たな知見や、継続的な衛星観測等による地球エネルギー収支の監視の重要性を示しています。

(注1)地球エネルギー吸収:大気上端において、地球が吸収する太陽放射と、宇宙へ放出する赤外放射との差で定義される量で、「地球エネルギー不均衡(Earth’s Energy Imbalance)」とも呼ばれています。例えば温室効果ガス濃度の増加は、地球から宇宙へ放出される赤外放射を弱めることで、正味のエネルギー吸収を強め、地球温暖化をもたらします。他に、気候システムに内在する自然変動によっても、地球エネルギー吸収量は年々変動の時間スケールで揺らぐことが知られています。
(注2)エルニーニョ現象・ラニーニャ現象:東部太平洋で、赤道に沿って海面の水温が平年値より顕著に高くなる現象をエルニーニョ現象、低くなる現象をラニーニャ現象と呼びます。いずれも気候システム内部で自励的に発達する自然変動現象です。これらは地球全体の大気循環を変化させ、世界各地の天候に影響を及ぼすことが知られています。

【論文情報】
雑誌名:Nature Geoscience
題 名:Multi-year La Niña-El Niño transition influenced Earth’s extreme energy uptake in 2022–23
著者名:Ko Tsuchida, Yu Kosaka & Shoshiro Minobe
DOI:10.1038/s41561-026-01921-6
URL:https://www.nature.com/articles/s41561-026-01921-6

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