生物有機化学研究室

分子レベルで生命を理解する。

研究内容

遺伝情報の維持・発現にかかわるクロマチン制御の分子機構の解明

遺伝情報の担い手であるDNAは何重にも折りたたまれて細胞の核という容器の中にパッケージングされている。この折りたたみの基本になるのがヒストン蛋白質とDNAからなる「クロマチン」構造である。核には多様なクロマチン構造が存在するが、その中でも「ヘテロクロマチン」と呼ばれるクロマチン構造は、細胞の分化・老化・がん化に関わるだけでなく、DNAの収納単位である「染色体」の維持にも深く関わっている。このヘテロクロマチンが、どのように必要な場所と時間に形成されるのか?またそれがどのように維持されるのか?さらにヘテロクロマチンの機能はどのように制御されているのか?わたしたちはこれらの疑問を解き明かそうとしている。

細胞内収縮装置を介した細胞形態の変化と維持の分子機構の解明

ミオシンIIは細胞遊走や細胞質分裂等の形態の変化を伴う細胞運動において中心的な役割を担っているタンパク質である。ミオシンIIは細胞内において必要な時に必要な場所でアクチンと共に細胞内収縮装置を形成し、細胞の形態を変えることができる。また、変化した細胞の形態を維持し続けることも、それぞれの細胞が正常に働くために必要なミオシンIIの重要な機能である。脊椎動物の細胞には、3種類の異なるミオシンIIが存在するが、それらの機能の違いは良くわかっていない。私達はそれらの生理機能を研究することにより、複雑な細胞形態の変化と維持の分子機構を明らかにすることを目標としている。

ヘテロクロマチンの偶発的かつ持続的変化が酵母の色や生育速度を変化させる。
矢印方向に遊走中の細胞の細胞骨格

研究室の特徴

細胞内では様々な反応が複雑なネットワークを作り、細胞を生存させ、さらに増殖・分化させています。我々は「遺伝子機能制御」「細胞運動形態制御」の2つの現象に興味を持ち、それぞれ鍵を握る分子、あるいは構造に着目し、遺伝学・生化学・分子生物学・細胞生物学など種々の手法を駆使して詳細な研究を進めてます。それぞれテーマは違っていても、研究を進める基本的枠組みや手法は共通であり、相互に議論し刺激を与え合いながら広い視野から研究に励んでいます。