研究者情報

石垣 侑祐

准教授

ISHIGAKI Yusuke

独自の分子設計で化学の基礎を築き上げる

化学部門 有機・生命化学分野

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研究テーマ

酸化還元活性な高歪化合物を構築し新たな機能を創出する

研究分野構造有機化学, 有機化学, 物理有機化学
キーワード高歪化合物, 酸化還元系, エレクトロクロミズム, メカノクロミズム, 長い結合, 超結合

研究紹介

独自の分子設計で新たな機能を有する分子の創出を目指す構造有機化学分野において、有機化学の基礎となる炭素-炭素共有結合に焦点を当てて研究を進めてきました。標準値から逸脱した構造パラメータを有する酸化還元活性な高歪化合物を対象としています(図「高歪化合物による特異な構造」参照)。
ごく最近の研究では、C-C単結合に着目し、『分子内コア-シェル構造』に基づく分子設計により、1.806±0.002 Åという単結合を有する化合物を報告しました(図「超結合を有するジヒドロピラシレン誘導体」)。この値は、中性炭化水素において世界最長であり、最短の炭素原子間接触(C···C)よりも長いことから共有結合の限界を超えた化学結合として『超結合』と呼ぶことを提唱しています(Chem誌参照)。
また、C=C二重結合に着目した分子設計によって歪みを有する分子を構築し、酸化還元以外の外部刺激(光、熱、機械的刺激等)による構造制御に向けた研究にも着手しています。 以上の研究により化学の新たな基礎を構築し、新たに創出した機能を用いて応用研究へとつなげることが本研究の目標です。

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高歪化合物による特異な構造
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超結合を有するジヒドロピラシレン誘導体:1.806(2) Aという極度に長い結合長とX線結晶構造(400 K)

代表的な研究業績

Dibenzotropylium-Capped Orthogonal Geometry Enabling Isolation and Examination of a Series of Hydrocarbons with Multiple 14π-Aromatic Units
Y. Hayashi, S. Suzuki, T. Suzuki, Y. Ishigaki
J. Am. Chem. Soc. 2023, 145, 2596-2608. (Chem-Station 第501回スポットライトリサーチ)
Hysteretic Three-State Redox Interconversion among Zigzag Bisquinodimethanes with Non-fused Benzene Rings and Twisted Tetra-/Dications with [5]/[3]Acenes Exhibiting Near-Infrared Absorptions.
Y. Ishigaki, T. Harimoto, K. Sugawara, T. Suzuki
J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 3306-3311. (Chem-Station 第308回スポットライトリサーチ)
Switching of Redox Properties Triggered by a Thermal Equilibrium between Closed-shell Folded and Open-shell Twisted Species
Y. Ishigaki, T. Hashimoto, K. Sugawara, S. Suzuki, T. Suzuki
Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59, 6581-6584.
Photo- and Thermal Interconversion of Multiconfigurational Strained Hydrocarbons Exhibiting Completely Switchable Oxidation to Stable Dicationic Dyes
Y. Ishigaki, Y. Hayashi, T. Suzuki
J. Am. Chem. Soc. 2019, 141, 18293-18300. (Chem-Station第244回スポットライトリサーチ)
Longest C–C Single Bond among Neutral Hydrocarbons with a Bond Length beyond 1.8 Å
Y. Ishigaki, T. Shimajiri, T. Takeda, R. Katoono, T. Suzuki
Chem 2018, 4, 795-806. (Selected as the Editors' Favorite Chem Articles from 2018)
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関連産業分野

機能性材料, 分子デバイス, 光学素子
学位博士(理学)
自己紹介

北海道帯広市出身です。これまで「機能性色素材料の開発」に関連した研究を進めてきました。趣味は旅行で、その土地のものを食べ歩くのが好きです。学生時代はソフトテニス部に在籍していました。

学歴・職歴2008年 北海道大学理学部化学科 卒業
2009年 北海道大学大学院理学院化学専攻 修士課程修了
2012年 北海道大学大学院理学院化学専攻 博士後期課程修了
2012-2013年 ドイツ・ウルム大学 博士研究員
2013-2015年 新日鉄住金化学株式会社
2016年- 北海道大学大学院理学研究院化学部門 助教
2021年- 現職
所属学会日本化学会, 基礎有機化学会, 有機合成化学協会, 光化学協会
プロジェクト北海道大学 スマート物質科学を拓くアンビシャスプログラム(SMatS)
居室理学部6号館 6-509号室

化学部門 有機・生命化学分野

石垣 侑祐

准教授

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研究者になったきっかけは何ですか?

もともとやり始めると没頭する性格で、やるからには全力投球をしてきました。小学生から高校生までは書道、中学生から社会人に至るまでソフトテニスをそれぞれ10年以上継続していたのもその性格による部分が大きいと思います。また、自らの手で新しいものを生み出すことに憧れていた私にとって、化学と出会い、その道に進むことになったのはもはや必然だったのではないでしょうか。自分で設計した、世界でまだ誰も手にしたことのない分子を創り出し、これまでにない現象を追究することのできる研究者は、天職だと思っています。

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研究を通して叶えたい夢は何ですか?

研究者になるきっかけにも通ずる部分がありますが、自らが創り出した分子を用いて、まだ明らかにされていない現象の解明や前人未踏の機能(応用)につながる研究をしたいと考えています。その先の夢の一つに、歴史に名を刻むことというのがあります。一つ一つの学術論文はもちろんですが、これまでに掲載された大学院の教科書(専門書)のほか、より広く目に留まるようなインパクトのある研究を継続して行いたいです。

炭素結合の謎を解き明かす
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研究者になるまでの思い出を教えてください。

博士の学位取得後、半年間のドイツ留学を経験しました。海外での生活は慣れないことも多かったですが、間違いなく自分にとってプラスになりました。英語圏への留学か、ヨーロッパへの留学かでだいぶ悩みましたが、私としてはドイツに決めて良かったと思っています。ここでは語りつくせないので、話を聞いてみたい方はメールでもTwitterのDMでも良いのでぜひ直接連絡下さい。帰国後は民間企業に勤め、大学とは違う研究の世界を知ることができました。特に、お世話になった上司のおかげで、組織をマネジメントする上で大切なものを学ぶことができたように思います。様々な場所を経験したことが今の自分の糧になっていると確信しています。

ドイツ(ウルム大学)に滞在中の写真
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得意なこと、⼤好きなこと、趣味、⽇課などを教えてください。

家ではいつも植物の世話をしています。野菜もいろいろと育てていて、子どもと一緒に収穫するのを楽しみにしながら手入れをしています。これまでに特に好評だった野菜はアスパラと枝豆ですね。いつもすぐに食べつくしてしまい、年々育てる量を増やし続けています。