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リュウグウ亜鉛同位体分析が解き明かす地球の揮発性物質の起源太陽系の果てで生まれたリュウグウ的物質は地球にも存在する

【ポイント】

  • Cb型小惑星「リュウグウ」の銅・亜鉛の同位体組成はイヴナ型炭素質隕石と一致する。
  • リュウグウの銅・亜鉛の同位体組成は太陽組成の最適な推定値と考えられる。
  • 太陽系外縁部由来のリュウグウ的物質が地球質量の約5%を占めると推察される。

【概要】
東京工業大学理学院地球惑星科学系の横山哲也教授、北海道大学大学院理学研究院の圦本尚義教授、東京大学大学院理学系研究科の橘 省吾教授らの研究グループは、Cb型小惑星「リュウグウ」の銅および亜鉛の同位体組成を測定し、太陽系外縁部に由来するリュウグウ的な物質が地球にも存在し、それは地球質量の約5%に相当することを突き止めました。

リュウグウ試料の初期分析により、Cb型小惑星「リュウグウ」はイヴナ型炭素質隕石に似た化学組成・同位体組成を持つことが明らかとなりました。しかし、これまでに測定された同位体組成は難揮発性元素(チタン・クロム・鉄)や揮発性の高い元素(酸素など)であり、地球の形成過程を議論する上で重要な中程度の揮発性を持つ元素に関しては、同位体組成に関する情報がありませんでした。

研究グループは、中程度の揮発性元素である銅および亜鉛の同位体組成を測定し、リュウグウとイヴナ型炭素質隕石の分析値が一致することを明らかにしました。また、リュウグウとイヴナ型炭素質隕石の銅および亜鉛の同位体組成は、他の炭素質隕石と明らかに異なることもわかりました。これは、リュウグウのチタン・鉄・クロムの同位体分析から得られた結論、すなわち、「リュウグウとイヴナ型炭素質隕石が他の隕石とは全く異なる場所で生まれた」という考察と整合します。さらに、リュウグウと地球の亜鉛同位体組成を比較した結果、地球に存在する亜鉛の約30%はリュウグウ的物質に由来すると推察されました。このことから、リュウグウが生まれた太陽系外縁部に存在していた物質が地球の形成にも寄与しており、その量は地球質量の約5%であると予想されます。

なお、本研究成果は、日本時間2022年12月13日に、Nature Astronomy誌にオンライン掲載されました。

論文タイトル:Contribution of Ryugu-like material to Earth’s volatile inventory by Cu and Zn isotopic analysis (銅および亜鉛同位体分析が明らかにした、地球の揮発性物質へのリュウグウ的物質の寄与)
DOI:10.1038/s41550-022-01846-1

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