研究ニュース

小惑星探査機「はやぶさ2」初期分析石の物質分析チーム研究成果の科学誌「Science」論文掲載について

 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)では小惑星リュウグウ試料分析を、6つのサブチームからなる「はやぶさ2初期分析チーム」および、2つの「Phase-2キュレーション機関」にて進めています。 
この度「はやぶさ2初期分析チーム」のうち「石の物質分析チーム」の研究成果をまとめた論文が、アメリカの科学誌「Science」に2022923日付(日本時間)で掲載されましたのでお知らせします。  

【ポイント】 

  •  液体の水との反応を大規模に経験したリュウグウサンプルに高温環境(1000℃以上)でできた粒子(CaAlに富む包有物1など)が含まれていることを発見した。これらの高温微粒子は太陽近くで形成された後に太陽系外側まで移動し、リュウグウの材料物質と共に現在のリュウグウの元の天体(リュウグウ母天体2)を形成したと考えられる。これは、誕生時の太陽系において内側と外側で大規模な物質混合が起こっていたことを示す。
  • サンプルに残された磁場の情報から、リュウグウ母天体は太陽から離れた太陽光が届かない星雲ガス3の暗闇の中で生まれた可能性が高い。
  • リュウグウ母天体が形成されたのは、水と二酸化炭素が氷で存在する-200℃以下の低温領域であった。
  • サンプル中の結晶に閉じ込められた液体の水を発見した。この水はかつてリュウグウ母天体にあった水であり、塩や有機物を含む炭酸水であった。
  • リュウグウの天体内部に存在した液体の水から、サンゴ礁のような形をした結晶が成長していた。
  • リュウグウの母天体では、水と岩石の比率が表層と地下内部で異なり、地中深くの岩石の方が水を多く含んでいた。
  • サンプルの硬さ、熱の伝わりやすさ、磁気特性などを測定した。その結果、リュウグウサンプルは包丁で切れるほど柔らかいことがわかった。また、小さな磁石が数多く含まれていたことから、過去の磁場を記録した天然のハードディスクであると言える。
  • リュウグウ母天体の誕生から衝突破壊までのプロセスをコンピュータによるシミュレーションで再現した。小惑星の形成進化のシミュレーションに、実際の小惑星のサンプルの硬さや温まりやすさなどの測定結果を取り入れたのは世界初であり、より精密な小惑星進化の描像が明らかになった。
  • このシミュレーションにより、リュウグウ母天体は太陽系形成から約200万年後に集積し、 その後300万年をかけておよそ50℃まで温まり、水と岩石の化学反応が進行したこと、直径100km程度のリュウグウ母天体を破壊した衝突天体の大きさはせいぜい直径10 km程度であること、現在のリュウグウは衝突点から離れた領域の物質からできていることがわかった。 

【概要】 
 東北大学理学研究科中村智樹教授らの研究グループは、小惑星探査機「はやぶさ2」が回収した小惑星リュウグウのサンプル(探査機が回収した3番目に大きなサンプル(図1)を含む17粒子)を日米欧の放射光施設5か所、ミュオン施設などを利用し宇宙化学的・物理学的手法による解析を行った。その結果、リュウグウの形成から衝突破壊までの歴史(太陽系内での形成とその位置、天体材料物質の情報、含まれていた氷の種類、天体表層および内部での水との反応による化学進化、天体衝突の影響など)が判明した。また、リュウグウサンプルには、衝突破壊前の母天体の表層付近の物質と天体内部の物質が混在していることが判明した。さらに、リュウグウサンプルの硬さ、熱の伝わり方、比熱、密度などを実測し、この実測値を使って、リュウグウ母天体形成後の天体内部の加熱による温度変化、および衝突破壊プロセスの数値シミュレーションを行い、リュウグウの形成進化をコンピュータ上で再現した。 

【論文情報】
タイトル: 炭素質小惑星リュウグウの形成と進化:リターンサンプルから得た証拠 
原題: Formation and evolution of carbonaceous asteroid Ryugu: Direct evidence from returned samples 
掲載誌: Science 
DOI10.1126/science.abn8671 

詳細はプレスリリースをご覧下さい。