研究ニュース

日本のシロイヌナズナ転移因子が活性化生息環境の違いで環境ストレス応答が異なる仕組みについての新しい知見

【ポイント】

  • シロイヌナズナのエコタイプKyotoでは高温ストレスでトランスポゾンが高発現。
  • KyotoではトランスポゾンのDNAメチル化が減少。
  • DNAメチル化の減少の原因はCMT2メチル化酵素の欠損変異によるものと判明。

図:標準的なエコタイプであるCol-0と京都のエコタイプKyotoにおけるDNAメチル化レベル。KyotoではONSEN配列上のDNAメチル化レベルが減少している。

【概要】
北海道大学大学院理学研究院の伊藤秀臣准教授の研究グループは、シロイヌナズナの転移因子(トランスポゾン)の環境ストレス応答が生息地域により異なる原因を明らかにしました。

トランスポゾンは様々な生物に存在しますが、生息環境とその活性化の関係についての理解は進んでいませんでした。研究グループは、モデル植物であるシロイヌナズナを用いて、37℃の高温条件で育てると活性化するトランスポゾン「ONSEN」に着目しました。ONSENは普段は眠っている(発現していない)のですが、高温条件下で目を覚まし(転写が活性化し)ます。本研究では、日本に生息するシロイヌナズナのエコタイプ33品種について、高温条件下で育てた場合のONSENの転写量を解析しました。その結果、Kyotoと名付けられたエコタイプにおいてONSENの転写量が顕著に上昇していることを見つけました。この現象の原因を調べてみると、DNAメチル化酵素の1つであるCMT2の合成に必要な遺伝子に変異が見つかりました。このことから、KyotoではONSENの活性化を抑制するために必要なDNAのメチル化が不十分なために、転写量が増加することが示唆されました。さらにKyotoではトランスポゾンの発現制御に必要なヒストン修飾であるH3K9me2も減少していることがわかりました。

本研究で得られた結果は、環境ストレスで活性化するトランスポゾンのストレス応答と宿主植物の制御機構について、生息地域間で多様性を生み出す原因の一つとして、トランスポゾンの制御に必要なDNAメチル化酵素の遺伝子突然変異が寄与するという新しい知見を得ることができました。

なお、本研究成果は、2022年7月18日(月)公開のFrontiers in Plant Science誌に掲載されました。

論文名:Epigenetic regulation of ecotype-specific expression of the heat-activated transposon ONSEN(高温活性型トランスポゾンONSENのエコタイプ特異的なエピジェネティック制御)
URL:https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2022.899105/full

 

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