研究ニュース

キノコ食のショウジョウバエ「専門家」「何でも屋」キノコショウジョウバエ食性の進化過程を推定

【ポイント】

  • キノコ食のショウジョウバエを対象に分子系統樹を作成し,祖先の食性を推定。
  • キノコ食のショウジョウバエは二つの系統からなることを確認。
  • 一方はキノコ食の「専門家」に特化,もう一方は「何でも屋」に食性を拡大。

【概要】
北海道大学大学院理学研究院の加藤 徹准教授,同大学院理学院博士後期課程の張 揚氏らの研究グループは,キノコ食のショウジョウバエを対象に分子系統学的解析を行いました。その結果,キノコ食ショウジョウバエは独立した二つの系統にわかれ,食性の進化過程がそれぞれ異なることを見出しました。

ショウジョウバエ科は4,000種以上が知られており,その食性は樹液食,果物食,草本食,キノコ食と多岐にわたります。そのうちキノコ食のショウジョウバエとしては,Hirtodrosophila属,Mycodrosophila属,Zygothrica属,及びDrosophila亜属のquinaria種群とよばれるグループが有名です。しかし,これらのキノコ食ショウジョウバエが,どのような進化の過程を経てキノコ食の形質を獲得したかは不明です。

本研究は,これらのキノコ食ショウジョウバエを対象にDNA情報を用いて系統関係を推定するとともに,彼らの祖先がどのような食性だったかを推定しました。その結果,Hirtodrosophila属,Mycodrosophila属,Zygothrica属の共通祖先では,果実食からキノコ食の「専門家」に食性が特化した一方,Drosophila亜属の祖先では,果実に加えキノコも利用する「何でも屋」に食性が拡大したと推定されました。

なお,本研究成果は,2021年7月10日(土)公開のMolecular Phylogenetics and Evolution誌に掲載されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。

 

◆加藤徹准教授による解説文はこちら