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世界初!海底地震計を使い,氷河流動の検出に成功微動を使った新しい氷河観測手法を提案

写真はグリーンランド・ボードインフィヨルドにおける海底地震計設置の様子(2019年7月21日。撮影: 浅地 泉)

【ポイント】

  • 地震波ノイズと,氷河の流動速度に高い相関があることを発見。
  • 氷河がすべる時に生じる微動を,氷河前に沈めた海底地震計を使って初めて検出。
  • 氷河から海に流入する氷と融け水のモニタリングや,その変動要因の解明に期待。

【概要】

北海道大学北極域研究センターのエヴゲニ・ポドリスキ助教,同大学大学院理学研究院の村井芳夫准教授,同大学北極域研究センターの漢那直也研究員(現東京大学海洋研究所),同大学低温科学研究所の杉山 慎教授らの研究グループは,グリーンランド・ボードイン氷河の直前で,海底地震計を使った観測に世界で初めて成功しました。観測された地震波ノイズの時間変化から,氷河の流動変化が推定できることを初めて明らかにしました。

氷河末端から約640mの海底に海底地震計を,氷河と陸上にGPS(全地球測位システム)受信機と地震計を設置して,地震波ノイズと氷河の流動速度を比較したところ,特に海底の地震波ノイズ振幅と流動速度の間に高い相関があることを発見しました。このことから,地震波ノイズが,氷河がすべる時に生じる微動であることが明らかになりました。

氷河の末端付近はアクセスと機材の設置が困難で,氷の破壊や強風によるノイズの影響を受けるため,流動の測定が困難です。これに対して,海底での観測によって,これらの弱点を克服することが可能になります。

本研究が提案する新しい手法により,グリーンランドにおける氷河から海に流入する氷と融け水のモニタリングが可能となり,その変動要因の解明が期待されます。

本研究成果は,2021年6月24日(木)公開のNature Communicationsにオンライン掲載されました。

詳細はプレスリリースをご覧ください。