研究ニュース

深海生物由来物質がモータータンパク質の可動温度域を拡大分子ロボットなどへの応用に期待

【ポイント】

  • 深海生物が利用する浸透圧調節物質TMAOはモータータンパク質を高温で安定に駆動させる。
  • TMAOを用いるとモータータンパク質は22〜46℃の範囲で従来の2.5倍程度長い時間運動できる。
  • 分子ロボットの駆動系など,モータータンパク質の利用範囲の大幅拡大に期待。

【概要】

北海道大学大学院理学研究院のアリフ ムハンマド ラセドウル コビル特任助教,佐田和己教授,角五 彰准教授と福岡大学理学部化学科の勝本之晶教授の研究グループは,深海魚が用いる浸透圧調節物質であるトリメチルアミンN-オキシド(TMAO)に,広い温度範囲でモータータンパク質の運動活性を保持する作用があることを発見しました。

TMAOがタンパク質の構造変性自体を抑制することは知られていましたが,微小管やキネシンなどの生体分子モーターの動的な状態を広い温度範囲で安定化させる作用を見出したのは初めてです。本研究により,TMAO添加によって人工的に再構成された生体分子モーターの安定性が高まることから,分子ロボットなどへの応用可能性の広がりも期待されます。

なお,本研究成果は2019年12月26日(木)公開のChemical Communications誌に掲載されました。

TMAO中におけるモータータンパク質(微小管・キネシン)の熱安定性向上のイメージ図
研究グループのメンバー(北海道大学のアリフ特任助教(左),角五准教授(中央)と 福岡大学の勝本教授(右))

詳細はプレスリリースをご覧ください。