研究ニュース

ナノ領域光電場内で物質の特異な光吸収プロセスを観測エネルギー高効率利用に期待

【ポイント】

  • 光エネルギーが局在化したナノ領域光電場内において単層グラフェンの特異な光吸収プロセスを観測。
  • 物質の光吸収プロセスを自在に制御しうる可能性を提案。
  • 高効率光利用による自由な光化学反応制御技術開発への応用に期待。

【概要】
北海道大学大学院 理学研究院の村越 敬 教授,同研究院及び同大学高等教育推進機構の周 睿風 助教らの研究グループは,炭素原子一層からなるグラフェンという材料を金属ナノ構造表面に配置し,その金属構造が作り出すナノ光源を利用することで,その物質が本来は示さない光吸収プロセスを発現しうることを明らかにしました。このことは,これまでの光化学反応の限界を超えた光誘起化学反応を自在に制御しうる可能性につながるばかりではなく,将来の光エネルギー変換技術開発への新たな一歩となる可能性を秘めています。

これまでに研究グループは,ナノ(10億分の1m)領域における光と物質の相互作用に焦点を当て,金属ナノ構造への光照射に伴い生成されるナノ光源を用いることで,通常の光励起プロセスでは起こりえない興味深い現象を誘起できる可能性について調査してきました。調査の中で,金属ナノ構造上に担持された単層カーボンナノチューブにおいて,ナノの光を用いることでその光学選択則を打破しうることを実験・理論解析の両面から証明してきました。しかし,その励起によってどのような状態を物質が取りうるかということについては,不明な点が数多く残されていました。

今回,研究グループは単層グラフェン上に構造が非常に制御された系及び物質の電子状態を厳密に規定できる電気化学手法を用いることで,本来は観測されない光学選択則の破れを高精度に制御しうることを見出しました。この成果は,将来の高効率光利用による自由な光化学反応制御技術につながる非常に有用な実験事実です。

なお,本研究成果は,2019年9月26日(木)公開のNano Letter誌に掲載されました。

 

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