研究ニュース

光電場内における特異な分子濃縮相形成を初めて観測新たな物質操作への期待

【ポイント】

  • 金属の電気化学ポテンシャルに依存した分子挙動の発現を確認。
  • 構造異性体分子が共存する系で電気化学電位を制御し分子をナノ光源で照らすと特徴的な濃縮相を形成。
  • 高精度分子制御手法などの新規技術開発への貢献に期待。

【概要】

北海道大学大学院 理学研究院の村越 敬 教授,南本 大穂 助教らの研究グループは,導電性ガラス電極上に作製した単一の金ナノ二量体構造を用いて,電気化学電位制御下でその二量体の間隙に形成・局在するナノの光源に照らされた二元系分子が,通常と比較して特異な濃縮相を形成することを初めて観測しました。このことは,これまで電気化学電位と物質自体の性質に依存していた物質の吸着状態を,光という摂動を用いることでさらなる自由度が獲得されることを示唆しています。

これまでに本研究グループは,ナノ(10億分の1m)領域で,電気化学電位が規定された場において固液界面に存在する分子の挙動について調査してきました。調査の中で,光をナノ空間に閉じ込めたナノ光源に分子が照らされている場合(例えば電気化学反応において触媒作用を持つような分子の場合),その触媒機構に変化が起こること等を実験的に明らかにしてきました。しかし,その光が局在した場において,分子の動的な動き自体を任意に変調させることに関しては,化学の極限的な技術であり実験的な困難さから実現していませんでした。つまり,物質の空間配置や電子状態の精密な制御を達成できると,化学の分野において革新的な技術となり得ます。

今回,本研究グループでは,構造異性体分子が共存する系において金属の電気化学電位を制御した状態で分子を照らすことで,その局在場において分子が非常に特徴的な濃縮相を形成することを明らかにしました。この成果は,将来の高精度分子制御手法につながる非常に有用な実験事実です。

なお,本研究成果は,2019年9月10日(火)公開のJournal of Physical Chemistry C誌に掲載されました。

 

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