タンパク質の立体構造を分類する新手法を開発 ~新規ネットワーク理論で多様なタンパク質の立体構造を客観的指標により分類~
【ポイント】
- 生命活動と深く関わるタンパク質の立体構造は明確な基準がないまま分類されていた。
- 新規ネットワーク理論(ISN)でタンパク質の立体構造の分類に成功。
- 安定で高機能なタンパク質類似物質等の開発に期待。
【概要】
北海道大学大学院理学研究院化学部門の今野翔平博士,石森浩一郎教授,同研究院数学部門の行木孝夫教授は,同大学 物質科学フロンティアを開拓するAmbitiousリーダー育成プログラムの異分野ラボビジットの成果を元に,これまで明確な基準がないまま分類されていたタンパク質の立体構造を新規に開発したネットワーク理論により客観的な指標を用いて分類することに成功しました。
タンパク質は,アミノ酸が直鎖状につながったペプチドがアミノ酸残基間の相互作用により一定の構造を形成して機能しており,すべての生物の生命活動を担う重要な分子です。つまり,生命活動をミクロな目で解析するためにはタンパク質の構造を知ることが重要で,これまで多くのタンパク質の構造が解明されています。その構造は多様ですが,部分的な構造は類似している場合が多いため多くの研究者は一定の分類をできると考えてきました。しかし,その分類基準は研究者の主観に頼るところが多く,また客観的な解析が期待できるタンパク質構造の数学的解析でも分類に成功していません。このように,タンパク質構造が機能を決め,それによって生命活動を維持しているにもかかわらず,タンパク質構造を客観的な指標に基づいて分類することは困難でした。
研究グループは,タンパク質を構成するアミノ酸残基を点で,結合や相互作用しているアミノ酸残基を点と点をつなぐ線として捉える新たなネットワーク理論を構築し,その理論を実際の約1,500種のタンパク質構造に対して適用しました。
その結果,特定のネットワークパラメータを用いることで立体構造の分類に成功し,数学的な客観的指標によりタンパク質全体の構造の分類が可能であることが示されました。
これにより,どのような構造がタンパク質として機能するのか,あるいは生物進化の過程でどのような構造がタンパク質として選ばれてきたのか,さらにどのような構造をもたせることによって安定で高機能なタンパク質類似物質や生体分子類似物質を人工的に創成できるのかなど,タンパク質科学における有用な情報を与えると期待されます。
なお,本研究成果は,2019年11月13日(水)公開のScientific Reports誌にオンライン掲載されました。
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