マグマ内のガスの“抜け道”が噴火の爆発性を低減させる ~塩素濃度解析による噴火メカニズム解明の進展に期待~
- 大爆発の危険があるマグマが,ガスを含まない穏やかなマグマに変化する仕組みを解明。
- 火山噴出物の塩素濃度測定により,マグマからガスが逃げ,爆発性が低下するメカニズムを解読。
- 本手法によりガスの詳しい挙動を調べることで,噴火メカニズムのさらなる理解に期待。
北海道大学大学院理学研究院の吉村俊平助教らの研究グループは,爆発の恐れがあるガス含有マグマの中で気泡同士が連結して通路を作ることで,気泡内のガスが流れ去り,ガスを含まない穏やかなマグマに変化するという仕組みを,火山噴出物内の塩素濃度を測定することで解明しました。
地球内部で作られたマグマには,たくさんのガス成分が溶け込んでいます。そのようなマグマが地表へ向かって上昇し,圧力が低下すると,炭酸飲料の栓を開けたときと同じように発泡し,マグマはムース状になります。マグマがさらさらした液体(例えば玄武岩質マグマ)であれば,気泡は速やかにマグマから分離し,「気の抜けたサイダー」のような,吹きこぼれない(爆発しない)液体に戻ることが可能です。一方,二酸化ケイ素(SiO2)成分に富むマグマは粘性が非常に高いため,一度発泡してしまうと気泡が分離できず,マグマ内のガス量が著しく増加し,大爆発を起こすのが自然です。
しかし実際には,高粘性のマグマでも爆発せず,穏やかに溶岩を流出することが少なくありません。このように,もともとはガスをたくさん含んでいるマグマが爆発せず,噴火が穏やかなものとなる理由は長い間不明でした。本研究では,SiO2 成分に富む溶岩の塩素濃度分布を詳しく解析することによ って,高粘性のマグマから効率よくガスが逃げ,爆発しなくなるメカニズムを解明しました。
噴出物の塩素濃度分布解析は,マグマ中のガスの動きを読み解く新しい手法になると考えられます。この手法を様々な噴火に適用することで,噴火の仕組みの理解が進むことが期待されます。
なお,本研究成果は,英国時間2019年1月28日(月)公開のScientific Reports誌に掲載されました。
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