千島海溝沿いでの「ひずみ」蓄積を海底観測で確認 ―北海道沖で17世紀以来の超巨大地震の再来が 切迫している可能性―
沖合の黒色ベクトルは、GNSS-A観測点において得られた水平変位速度およびその2σ誤差楕円を示す。陸上の黒色ベクトルは、国土地理院F5解を用いて求めた陸上のGNSS観測点における水平変位速度を表す。黄色の星は、変位速度の基準点(北海道猿払村:950101観測点)を示す。黄色のベクトルは太平洋プレートの運動方向・速度を示す。青色の破線の長方形は、17世紀の超巨大地震の断層モデル(Ioki & Tanioka, 2016)を表す。緑色の等値線は、過去の M7–8クラスの地震におけるすべり分布を示す。実線および破線の緑色の長方形は、それぞれ1969年および1975年の千島海溝沿いの地震の大すべり域を示す。紫色および橙色の円は、それぞれ観測期間である2019年7月から2024年4月まで(Mj ≥ 4.0)および観測期間以前の1997年10月から2019年6月まで(Mj ≥ 5.0)に発生した地震の震央を示す。マゼンタの×印は微動(Nishikawa et al., 2019)の分布を示す。
【ポイント】
- 北海道根室沖の千島海溝軸近傍において、2019年から2024年にかけて海底地殻変動観測(GNSS-A観測)を実施しました。
- 海底の変位速度から陸側のプレートと太平洋プレートとの間の固着状態を検討した結果、海溝近傍の浅部プレート境界ではほぼ100%の固着が生じていることが判明しました。
- 17世紀に発生したモーメントマグニチュード(Mw)8.8の超巨大地震以降、過去約400 年間にわたり現在と同じ速度でひずみが蓄積していた場合、17世紀の超巨大地震のすべり量に匹敵するひずみが既に蓄積していると考えられます。本成果は、海溝軸まで破壊が達するM8後半〜9級の超巨大地震とそれに伴う津波の再来が切迫している可能性を示唆しています。
【概要】
過去の津波堆積物の研究から、千島海溝南西部(北海道太平洋沖)では、約400年に一度、海溝軸まで断層破壊が及ぶ超巨大地震が発生してきた可能性が示されていました。陸域の測地観測網(GNSS)は海溝から遠すぎるため、海溝付近のプレート境界の状態を正確に把握することは困難でした。東北大学災害科学国際研究所、東北大学大学院理学研究科、北海道大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の共同研究チームは、2019年から5年間にわたり、根室沖の海底3地点でGNSS測位と音響測距技術を組み合わせた海底地殻変動観測(GNSS-A 観測)を実施、海溝付近のプレート境界が現在は強く固着している直接的な証拠を得ました。仮に前回の超巨大地震から約400年、現在と同じ速度でひずみが蓄積していた場合、前回の地震で解放されたすべり量(約25m)とほぼ同等のすべりを起こすだけのエネルギーが蓄積されていることになります。このエネルギーが巨大地震として解放された場合、海溝近傍での大きなすべりとそれに伴い巨大津波が励起されると考えられます。
本成果は2026年2月14日に科学誌Communications Earth & Environmentに掲載されました 。
【論文情報】
雑誌名:Communications Earth & Environment
題 名:Seafloor geodetic evidence of slip deficit near the southwestern Kuril Trench
著者名::Fumiaki Tomita, Yusaku Ohta, Motoyuki Kido, Mako Ohzono, Hiroaki Takahashi, Ryota Hino, Takeshi Iinuma
DOI:10.1038/s43247-026-03297-2
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