研究ニュース

分子構造を操りドミノ型のレドックス反応を初めて実現多電子輸送特性を制御可能な応答性分子として期待

【ポイント】

  • 最初の酸化により直ちに分子構造が変化することで、後続の酸化反応が容易に進行することを発見。
  • 柔軟な分子を設計することで、クーロン反発の影響を受けることなく多電子移動を駆動可能。
  • 多電子輸送特性を制御可能な設計指針の獲得により、フロー電池などへの応用に期待。

【概要】
北海道大学大学院理学研究院の石垣侑祐准教授及び同大学大学院総合化学院博士後期課程の張本 尚氏らの研究グループは、二つのキノジメタン型レドックスユニットを硫黄原子で架橋したジチインビスキノジメタン型分子(SS-BQD)を合成し、柔軟な分子構造変化を利用することでドミノ型のレドックス反応が進行することを初めて実証しました。

ドミノ倒しから連想されるように、最初の反応が進行することで後続の反応が連鎖的に進行するドミノ型反応は、グリーンケミストリーの観点からも優れた反応様式と言えます。このドミノ型プロセスをレドックス反応に適用することができれば、従来にない機能をもった分子の開発が可能と考えられますが、これまで実現された例はありませんでした。これは、レドックス反応により正または負の荷電種(陽イオンまたは陰イオン)が生じると、後続のレドックス反応が電荷の反発(クーロン反発)の影響によって進行しにくくなるためです。従って、ドミノ型のレドックス反応を実現するには、このクーロン反発を乗り越えられる独自のアプローチが必要不可欠です。

研究グループは、分子構造自体をコントロールすることが成功の鍵を握ると考え、柔軟なジチインビスキノジメタン型分子(SS-BQD)を設計、合成しました。その結果、最初の酸化反応をトリガーとして、酸化されやすい分子構造へと速やかに変化することで、後続の酸化反応が連鎖的に進行することを明らかにしました。さらに、温度変化によって多電子輸送特性を制御可能なことから、ドミノレドックス反応を利用した材料開発への展開が期待されます。

なお、本研究成果は、2023年11月28日(火)公開のAngewandte Chemie (Angewandte Chemie International Edition) 誌にオンライン掲載されました。

論文名:Domino-Redox Reaction Induced by An Electrochemically Triggered Conformational Change(電気化学的刺激に基づく構造変化により実現されたドミノレドックス反応)
DOI:10.1002/anie.202316753

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