鳥の目ヂカラは相手次第 ~鳥類の顔の特徴の多様性理解に貢献~
【ポイント】
- 文鳥は、目の周囲のリング状の皮膚(アイリング)が濃いピンク色で膨れている。
- 文鳥のアイリングは、つがい相手がいる時にだけ顕著に膨れ、目が際立つ。
- このような「目ヂカラ」向上は、繁殖準備OKのサインになっているようである。
【概要】
北海道大学大学院理学研究院の相馬雅代准教授らの研究グループは、文鳥の目元が、つがい相手と関係をはぐくむタイミングで、徐々に派手になっていくことを発見しました。
文鳥の目は、羽の生えていない環状の濃ピンク色の皮膚に囲まれており、この部分はアイリングまたは眼瞼輪(がんけんりん)と呼ばれています。文鳥を含む一部の鳥では、アイリングなどの「装飾」によって目を際立たせる外見的特徴を持つことは知られているものの、それがどのような機能を担っているかは未解明の部分が多くありました。また一般に、文鳥のアイリングが身体コンディションを反映して変化している可能性は推測されてきたものの、実証的検討はありませんでした。
この研究では、文鳥を、好みの異性個体と一緒にしてつがい形成させるか、好みでない相手と一緒にしておくかで、アイリングの大きさが継時的にどう変化するか観察し比較しました。その結果、文鳥は、つがいを形成した時にだけ、およそ2〜3ヶ月かけてアイリングを少しずつ肥大させていることが分かりました。好みでない相手と一緒にいた場合や、一羽でいた場合にはこのようなアイリングの変化はおこりませんでした。また、オスとメスとで比較すると、オスの方が、アイリングがやや太いものの、つがい形成時の変化の仕方に差はありませんでした。
文鳥は、つがいが長期にわたって添い遂げるという特徴を持ちます。また野生の文鳥は、熱帯に生息しており、温帯の鳥のような明確な繁殖シーズンはなくほぼ年間を通じて繁殖します。このような生態学的特徴をふまえると、つがいとなったオスとメスとの間で、繁殖可能であることを相手に伝える信号として、アイリングが進化してきた可能性があります。
鳥における色彩豊かな外見上の特徴の多くが、配偶相手を選ぶ際の手がかりとして有効であることは、過去の多くの研究で示されてきました。それとは対照的にこの研究では、配偶相手選択後、つまり特定の相手とつがいになった後に、派手さが増すことが観察され、鳥の顔が伝える情報の多様性の新たな一面を明らかにすることができました。
なお、本研究成果は、2023年10月25日(水)、PLOS ONE誌に掲載されました。
論文名:Eyes of love: Java sparrows increase eye ring conspicuousness when pair-bonded(文鳥はつがいの絆によってアイリングを際立たせる)
URL:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0292074
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北海道大学リサーチタイムズ「鳥の求愛行動やコミュニケーションを理解することは、人間存在を知る手だてにもなる」