世界初!DNAオリガミを融合した分子人工筋肉を開発 ~ナノからマクロスケールまで広範に適応する再生可能なソフトアチュエーターとして期待~
【ポイント】
- バイオテクノロジーとDNAナノテクノロジーの融合で自在にサイズ変更できる分子人工筋肉を開発。
- 再生可能な化学エネルギーを力学エネルギーへと高効率に変換可能。
- 医療用マイクロロボットや昆虫型ドローンなどへの動力源として期待。
【概要】
北海道大学大学院理学研究院の角五 彰准教授,関西大学化学生命工学部の葛谷明紀教授,東京工業大学情報理工学院情報工学系の小長谷明彦教授らの研究グループは,モータータンパク質とDNAからなるオリガミを組み合わせることで,化学エネルギーを力学エネルギーに直接変換する分子人工筋肉の開発に世界で初めて成功しました。
モータータンパク質は,化学エネルギーを力学的な仕事へと変換するナノメートルサイズの分子機械です。バイオテクノロジーの発展によりモータータンパク質の合成が可能となり,優れたエネルギー変換効率と高い比出力特性(一般的な電磁モーターの20倍)を有しているため,マイクロマシンや分子ロボットの動力源として期待されています。しかし,ナノメートルサイズのモータータンパク質を秩序立てて目に見える大きさにまで組み上げることはこれまで不可能でした。
本研究では,バイオテクノロジーにより合成されるモータータンパク質とDNAナノテクノロジーにより合成されるDNAナノ構造体(DNAオリガミ)を組み合わせることで,自在にサイズを制御可能な分子人工筋肉の開発に成功しました。これにより,化学エネルギーで駆動するミリメートルからセンチメートルサイズの動力システムが実現し,将来的には医療用マイクロロボットや昆虫型ドローンなどの動力源として期待されます。
なお,本研究は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の次世代人工知能・ロボット中核技術開発プロジェクトの一つとして行われ,北海道大学,関西大学,東京工業大学がDNAオリガミを融合した分子人工筋肉のグランドデザインを考案しました。DNAオリガミの設計と調製は関西大学が,モータータンパク質の合成とDNAオリガミとの複合化,化学エネルギーによる分子人工筋肉の動作発現は北海道大学が,プロジェクトの運営管理は東京工業大学が行いました。
また,本研究成果は,2019年4月30日(火)公開のアメリカ化学会刊行 Nano Letters 誌に掲載されました。
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