研究ニュース

フロー法による炭素フッ素結合の直接変換に成功創薬研究開発プロセス迅速化に期待

【ポイント】

  • 強固な結合である炭素-フッ素結合を選択的に一つだけ切断し、新たな官能基への変換に成功。
  • フロー型反応器を活用することで、不安定活性種を制御し、わずか数秒での反応を実現。
  • 医薬品の中で重要な含フッ素医薬品の創薬研究、開発プロセスの迅速化に期待。

【概要】
北海道大学大学院理学研究院の永木愛一郎教授、岡本和紘准教授、セントラル硝子株式会社所属で同大学大学院総合化学院博士課程学生の牟田健祐主任研究員らの研究グループは共同で、フロー型反応器を活用し、トリフルオロメチル化合物の炭素-フッ素結合を選択的に一つだけ切断し、新たな官能基へとわずか数秒で変換する反応の開発に成功しました。

有機フッ素化合物はその特異的な性質から医薬・農薬品、機能性材料など幅広く活用されています。中でもジフルオロメチルユニットは他の官能基(エーテル、チオール基)の生物学的等価体として知られるなど、近年医薬、農薬分野で注目されています。しかし、その合成法は限られていることから、ジフルオロメチルユニットを簡便かつ迅速に合成する新たな手法の開発が望まれています。

研究グループは、流通型反応器で微小な流路を反応場とするフローマイクロリアクターを活用し、トリフルオロメチル化合物から極めて不安定なジフルオロメチルアニオン種を瞬時に発生させ、トリフルオロメチル基のフッ素原子を一つだけ新たな官能基に変換する化学反応の開発に成功しました。本手法は、わずか6.3秒以内で反応が進行し、医薬品等の生理活性物質にも活用できることから、創薬への活用も期待されます。また抗HIV薬として知られる分子の短工程、短時間合成にも成功し、本手法の実用性を実証しました。

なお、本研究成果は、2025年1月7日(火)公開のNature Communications誌に掲載されました。

論文名:Defluorinative Functionalization Approach led by Difluoromethyl Anion Chemistry(ジフルオロメチルアニオン化学が導く脱フッ素官能基化アプローチ)
URL:https://doi.org/10.1038/s41467-024-52842-0

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