研究ニュース

セントロメア速く進化するしくみセントロメアクロマチンを標的にレトロトランスポゾン転移する

【ポイント】

  • セントロメアの速い進化の要因の一つである、レトロトランスポゾンのセントロメア特異的な挿入について、鍵となるメカニズムを明らかにしました。
  • 多くの生物でセントロメア付近はレトロトランスポゾンに富むことがこれまで知られていましたが、今回、その機構として、レトロトランスポゾンがセントロメアクロマチンを標的としていることを示しました。
  • レトロトランスポゾンの動態をさらに知ることで、セントロメアやゲノムの進化におけるトランスポゾンの意義とインパクトについて明らかにできると期待されます。

東京大学大学院理学系研究科の塚原小百合特任研究員、角谷徹仁教授らによる研究グループは、北海道大学大学院理学研究院の伊藤秀臣准教授、サセックス大学のアレクサンドロス・ブシオス教授のグループをはじめ、パリ・サクレー大学、ケンブリッジ大学、国立遺伝学研究所、グレゴーメンデル研究所、岡山大学、京都産業大学の研究グループとの共同研究により、セントロメア(注1)の速い進化の要因であるレトロトランスポゾン(注2)の特異的挿入機構を示しました。

なお、本研究成果は、2025年1月7日(火)公開のNature誌に掲載されました。

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論文名:Centrophilic retrotransposon integration via CENH3 chromatin in Arabidopsis
著者:Sayuri Tsukahara*, Alexandros Bousios*, Estela Perez-Roman, Sota Yamaguchi, Basile Leduque, Aimi Nakano, Matthew Naish, Akihisa Osakabe, Atsushi Toyoda, Hidetaka Ito, Alejandro Edera, Sayaka Tominaga, Juliarni, Kae Kato, Shoko Oda, Soichi Inagaki, Zdravko Lorković, Kiyotaka Nagaki, Frédéric Berger, Akira Kawabe, Leandro Quadrana, Ian Henderson & Tetsuji Kakutani* (*責任著者)
DOI:10.1038/s41586-024-08319-7

(注1)セントロメア
細胞分裂の際の染色体分配に関わるゲノムDNA領域。この領域に形成されるタンパク質複合体(動原体と呼ばれる)に、紡錘糸と呼ばれる構造が付着し牽引することで染色体の分配が達成される。
(注2)レトロトランスポゾン
ゲノム上で移動や増殖をする「トランスポゾン」と呼ばれるDNA配列のうち、RNAを介して増殖するもの。転写されたRNAを逆転写してDNAを作る過程を経て、ゲノム上の新たな座に挿入される。