研究者情報

長谷部 高広

准教授

HASEBE Takahiro

非可換な変数に対する確率論を作る

数学部門 数学分野

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研究テーマ

非可換確率論

研究分野確率論、関数解析、組合せ論
キーワード自由確率論、無限分解可能分布、Levy過程、キュムラント

研究紹介

文字列は文字の順番を入れ替えると意味が変わるという性質を持っています。文字のように入れ替えることで意味が変わるものを「非可換」と呼び、これを「確率変数」であるとみなして確率論を展開する、という分野が非可換確率論になります。確率変数の「独立性」をどのように定義すべきかなどの課題があります。ランダム行列の解析、量子情報理論、群の表現論、グラフ理論等に応用されています。

代表的な研究業績

T. Hasebe and H. Saigo, The monotone cumulants, Ann. Inst. Henri Poincare Probab. Stat. 47, No. 4 (2011), 1160-1170.
T. Hasebe and S. Thorbjørnsen, Unimodality of the freely selfdecomposable probability laws, J. Theoret. Probab. 29 (2016), Issue 3, 922-940.
O. Arizmendi and T. Hasebe, Limit theorems for free Levy processes, Electron. J. Probab. 23, no. 101 (2018), 36 pp.

数学部門 数学分野

長谷部 高広

准教授

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いま没頭している研究テーマは何ですか?

主に自由確率論という分野を中心に、色々な関連する分野の研究を行なっています。少し経緯をお話しすると、まず高校までの物理学では微分方程式を全く使わなかったのですが、大学に入ると多くの微分方程式が登場します。そこで学部生の頃は物理学と数学の微分方程式に加えて確率論に力を入れて学んでいました。その後、大学院の研究室の影響を受けて、量子物理から強く影響を受けて誕生した数学の分野である自由確率論(より一般に非可換確率論)の研究をするようになりました。その間、微分方程式の研究はほぼしていませんでしたが、ここ3、4年ほど、形状最適化・トポロジー最適化という工学の問題に取り組む機会があり、偏微分方程式に関する論文をいくつか執筆するに至り、また二つも論文賞をいただきました。昔やりたかった偏微分方程式の研究ができて嬉しく思っています。

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研究者になったきっかけは何ですか?

学部生の頃は物理学と数学を両立させて研究しようと思っていて、数学(ほとんど解析学)と物理学全般の講義を色々と受講しました。どちらかというと物理学を中心に学んでいたので、数学についてはあまり情報を入手できず、勉強法などはかなり自己流でした。特に流体力学、統計物理学、量子論に動機づけられて、偏微分方程式と確率論に力を入れて数学の学習をしていました。例えば、偶然性に由来する物理理論(特にアインシュタイン、ランジュバンらによるブラウン運動の理論)から派生してきた確率論が理路整然としており、偏微分方程式と密接につながっているところに強く興味を持ちました。この辺りの学習に熱中したのが現在の研究にも繋がっており、研究者になった一つの大きなきっかけだと思います。

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研究者になるまでの思い出を教えてください。

学部生の頃に統計物理学の中で出てきた確率微分方程式(特にランジュバン方程式)を勉強するためにKaratzas, Shreveの” Brownian Motion and Stochastic Calculus”という本に挑戦したのですが、難しくて諦めていました。そこで知り合いの数学科の先輩に相談したところ、必要となる技術や予備知識を教えてもらうことができて、満足のいくところまで読むことができました。偏微分方程式については、お世話になった先生から勧められたGilbarg, Trudingerの”Elliptic Partial Differential Equations of Second Order”という本に挑んだのですが、難しくて諦めました。3年ほど経って博士課程に進学した後にふと再チャレンジしたら、面白いようにすいすいと読めてしまって、結局、半分くらい(非線形の方程式が出てくる手前)まで読むことができました。 他にも似たような経験がいくつもあります。