研究者情報

速水 賢

准教授

HAYAMI Satoru

相関電子系の物性理論:新規量子相・物性現象の開拓

物理学部門 電子物性物理学分野

basic_photo_1
研究テーマ

1. ミクロな拡張多極子に基づいた電子物性表現論の構築
2. 電気・磁気・弾性・熱・光自由度間にまたがる新しいマルチフェロイクス現象の開拓
3. 遍歴電子フラストレーション機構に基づいたトポロジカルスピン結晶の創出
4. 磁気スキルミオンおよび磁気渦の安定化機構およびダイナミクス
5. 反強磁性スピントロニクスの実現に向けた機能物性開拓
6. 現実物質が示す非自明な電子相および物性現象の解明

研究分野物性物理学, 強相関電子系, 低温物理学
キーワード多極子, 強相関電子, トポロジカル磁性, マルチフェロイクス, スピントロニクス, スピン軌道相互作用, 相転移, 非線形光学, 量子相, フラストレーション, 超伝導, 非相反マグノン, トロイダルモーメント

研究紹介

物質科学の魅力の1つは、組み合わせる元素の種類や組成比、結晶構造の違いによって、磁性や超伝導、誘電性などの異なる物性が現れる多様性です。その中でも相関電子系では、固体中の電子同士が互いのクーロン反発力の影響を強く受けることにより、電荷の自由度だけではなく、スピンや軌道の自由度といった他の内部自由度が重要な役割を果たすようになります。これらの内部自由度は、スピン軌道相互作用や結晶構造の歪みといった様々な要素を通じて絡み合うことによって、通常の金属や半導体では考えられない面白い性質を生み出します。 私は、こうした強相関電子系が示す多彩で魅力的な物性現象を理解するうえで重要な要素を最小限だけ取り入れたモデルに対して、量子統計力学に基づいた理論解析と数値シミュレーションを相補的に用いた研究を行っています。研究を通して、これまでにない新しい量子状態や物性現象の発見・理解といった基礎物理の開拓に留まらず、次世代のテクノロジーの理論的な基盤を提供することを目指しています。

代表的な研究業績

Classification of atomic-scale multipoles under crystallographic point groups and application to linear response tensors,
S. Hayami, M. Yatsushiro, Y. Yanagi, and H. Kusunose, Phys. Rev. B 98, 165110 (2018)
Topological spin crystals by itinerant frustration,
S. Hayami and Y. Motome, J. Phys.: Condens. Matter 33, 443001 (2021).
Microscopic Description of Electric and Magnetic Toroidal Multipoles in Hybrid Orbitals,
S. Hayami and H. Kusunose, J. Phys. Soc. Jpn. 87, 033709 (2018).
Effective bilinear-biquadratic model for noncoplanar ordering in itinerant magnets,
S. Hayami, R. Ozawa, and Y. Motome, Phys. Rev. B 95, 224424 (2017)
Nonlinear nonreciprocal transport in antiferromagnets free from spin-orbit coupling,
S. Hayami and M. Yatsushiro, Phys. Rev. B 106, 014420 (2022).
学位博士 (工学)
学歴・職歴2010年 大阪大学基礎工学部電子物理科学科 卒業
2012年 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 修士課程修了
2014年 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 博士後期課程修了
2014年 日本学術振興会 特別研究員
2015年 ロスアラモス国立研究所 理論部門 ポスドク
2016年 北海道大学大学院理学研究院物理学部門 助教
2019年 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 講師
2020年 科学技術振興機構 さきがけ研究者 兼任
2022年- 現職
所属学会日本物理学会
居室理学部2号館 11-13室

物理学部門 電子物性物理学分野

速水 賢

准教授

basic_photo_1
研究を通して叶えたい夢は何ですか?

・一つでも多くの物性現象を発見して理解すること
・学生の方々に研究の楽しさを伝え、次世代を担う研究者を育成すること

basic_photo_1
研究者になったきっかけは何ですか?

「小さい頃から研究者になりたかった」などの強い理由はとくになく、気づいたら今の立場になっていました。ただ、誰からも縛られることなく、自らの知的好奇心に従ってテーマを考え、それを解決するという大学での研究の自由さが、自分の性に合っていたのではないかと思います。

basic_photo_1
研究に⾏詰まったらどんなことをしますか?

一つの研究テーマだけをやっていることはないので、別のテーマについて考えるなどして、時間を置きます。後は誰かに聞いてもらったりしながら考えを整理します。

basic_photo_1
研究室の自慢を教えてください。(スタッフ、学生、論文数、実験装置のことなど)

学生の皆さんの研究アクティビティの高さです。毎週行っている議論の際には、とても多くの研究成果を示してくれます。私が予想していなかった結果を持ってきてくれることも多く、とても楽しみな時間です。