研究者情報

鎌田 瑠泉

准教授

KAMADA Rui

自然免疫の制御機構を明らかにする

化学部門 有機・生命化学分野

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研究テーマ

自然免疫細胞の分化・成熟におけるSer/ThrホスファターゼPPM1Dの機能解明

研究分野生物化学, ペプチド化学, 生体関連化学, 細胞生物学, 機能生物化学
キーワードタンパク質, 細胞分化, ホスファターゼ, 自然免疫, 自然免疫記憶, 好中球, ペプチド

研究紹介

真核生物の遺伝子発現は、ヒストンタンパク質の化学修飾、DNAのメチル化等のエピジェネティクス制御を受けています。このエピジェネティクス制御の破綻はがん・免疫疾患・生活習慣病など、様々な疾患に関与していることから、エピジェネティック制御機構の解明はそれら疾患発症メカニズムの解明や治療法の開発にとって極めて重要です。これまでに、自然免疫において中心的な役割を担っているインターフェロンに着目し、哺乳細胞においてインターフェロン刺激により転写の"記憶"が形成され、二回目の刺激に応答して遺伝子発現が素早く、かつ強力に誘導されることを見出しています。さらに、この転写記憶がヒストンタンパク質H3.3により制御されていることを明らかにしています。図「自然免疫応答における転写記憶」参照。
また、自然免疫を担う好中球やマクロファージの細胞分化や成熟の制御メカニズム解明を目指して、Ser/ThrホスファターゼPPM1Dに着目した研究を進めています。PPM1DはDNA損傷やストレス依存的に発現誘導され、細胞周期停止・アポトーシスを誘導するp53, ATMの脱リン酸化・不活性化を介して細胞周期の恒常性を維持しています。現在、PPM1Dの特異的阻害剤の開発や、細胞分化を解析する手法の開発を進めるとともに、好中球・マクロファージにおけるPPM1Dの機能解明を行なっています。

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自然免疫応答における転写記憶

代表的な研究業績

InterferonInterferon stimulation creates chromatin marks and establishes transcriptional memory.
Kamada, R., Yang, W., Zhang, Y., Patel, M.C., Yang, Y., Ouda, R., Dey, A., Wakabayashi, Y., Sakaguchi, K., Fujita, T., Tamura, T., Zhu, J., and Ozato, K.
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2018, 115, E9162-E9171.
Inhibition of Ser/Thr phosphatase PPM1D induces neutrophil differentiation in HL-60 cells.
Kamada, R.*, Kudoh, F., Yoshimura, F., Tanino, K., and Sakaguchi, K.
J. Biochem. 2017, 162, 303-308.
PPM1D controls nucleolar formation by up-regulating phosphorylation of nucleophosmin.
Kozakai, Y.*, Kamada, R.*, Furuta, J., Kiyota, Y., Chuman, Y., and Sakaguchi, K.
Sci. Rep. 2016, 6, 31993.
Effective Cellular Morphology Analysis for Differentiation Processes by a Fluorescent 1,3a,6a-Triazapentalene Derivative Probe in Live Cells.
Kamada, R., Tano, F., Kudoh, F., Kimura, N., Chuman, Y., Osawa, A., Namba, K., Tanino, K., and Sakaguchi, K.
PLoS One, 2016, 11, e0160625
Novel Inhibitors Targeting PPM1D Phosphatase Potently Suppress Cancer Cell Proliferation.
Ogasawara, S., Kiyota, Y., Chuman, Y., Kowata, A., Yoshimura, F., Tanino, K., Kamada, R., and Sakaguchi, K.
Bioorg. Med. Chem. 2015, 23, 6246-6249.

関連産業分野

医薬品
学位博士(理学)
学歴・職歴2006年 北海道大学理学部化学科 卒業
2007年 北海道大学大学院理学院化学専攻 修士課程修了
2010年 北海道大学大学院理学院化学専攻 博士後期課程修了
2008-2011年 日本学術振興会特別研究員(DC1)
2011-2012年 京都大学大学院工学研究科 特定研究員
2012-2014年 米国国立衛生研究所(NIH) Visiting Fellow
2014年-2020年 北海道大学大学院理学研究院化学部門 助教
2020年- 現職
所属学会日本生化学会, 日本化学会, 日本ペプチド学会, 日本プロテインホスファターゼ学会
居室理学部6号館 6-507室

化学部門 有機・生命化学分野

鎌田 瑠泉

准教授

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いま没頭している研究テーマは何ですか?

私たちの体を病原体やウイルス、さらにはがんから守っている免疫は、自然免疫と獲得免疫に大別されます。私は、自然免疫に関わる様々な細胞がどのように作り出され、機能しているのかを明らかとするため、研究を進めています。細胞の中で様々な働きを担うタンパク質の中でも、脱リン酸化という化学反応を触媒するホスファターゼ(酵素)に注目し、自然免疫の最初期に働く好中球や、脂肪細胞の機能制御を明らかにしたいと思っています。本研究により、免疫疾患に対する新規治療法や、がんに対する新しい免疫治療法の開発につなげたいと思っています。

脱リン酸化を触媒する酵素PPM1Dは好中球や脂肪細胞の分化および機能を制御している。
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研究者になったきっかけは何ですか?

子供の頃から理科が好きで、よく両親に科学館に連れて行ってもらいました。高校生のときに化学が面白いと思い、理学部化学科に入学しました。その後、大学で生物化学に出会い、生体の中で働く細胞やタンパク質の機能を調べていく楽しさに没頭するようになりました。大学、大学院と自分の好きな研究を進めていくうちに、好きな研究を続けるためにはどうすれば良いのだろうと考えた結果として、研究者の道を選びました。

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得意なこと、⼤好きなこと、趣味、⽇課を教えてください。

出身が北海道ということもあり、ウィンタースポーツが好きなので、冬にはスキーをしてリフレッシュしています。夏は暑いのが苦手で外に出ないため、冬の方が日焼けしているかもしれません。また、映画鑑賞や野球観戦も好きです。

札幌のスキー場
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留学について

私は博士後期課程の時にカナダ・モントリオール大学に短期留学し、博士号取得後に2年間アメリカの研究室に留学しました。世界中からポスドクが集まる研究機関での研究生活は、様々な考え方の研究者と一緒に研究し、交流する機会が得られ大変楽しい日々でした。生活面など大変なこともありましたが、今となってはとても良い思い出です。海外に出る機会があれば、積極的にチャレンジしてみてはどうでしょうか。