研究ニュース

水深約7,200m超深海域から新種の寄生性甲殻類を発見

【ポイント】

  • 北海道南東の千島海溝の水深7,184~7,186 mからDiexanthema(ディエクサンセーマ)属の寄生性甲殻類の新種を発見。
  • Diexanthema属の北大西洋以外からの発見は今回が初めてであり、本属の最深記録を大幅に更新。
  • 日本近海の生物多様性解明・保全における超深海域の調査の重要性を再確認。

【概要】
北海道大学大学院理学研究院の角井敬知講師、京都大学大学院理学研究科博士課程3年の福地 順氏、東京大学大気海洋研究所の太田瑞希特任研究員の研究グループは、千島海溝の超深海域からDiexanthema属の寄生性甲殻類の新種を発見しました。

地球最後のフロンティアとも呼ばれる深海域、特に水深6,500mより深い超深海域は、世界的にも調査可能な研究船・潜水艇等が限られることから、未だ多くの発見が残されている海域です。

今回、2022年に実施された学術研究船「白鳳丸(はくほうまる)」による超深海域における生物調査の過程で、千島海溝の水深7,184~7,186 mから採集した深海性ワラジムシ類の脚や体に、丸い実のようなものがぶら下がっているのを発見しました。詳細な観察の結果、それは動物で、これまで北大西洋の水深3,550m以浅からしか報告のなかったDiexanthema属というカイアシ綱甲殻類(ケンミジンコなどが含まれる動物群)の寄生性種であること、さらに名前のついていない種(未記載種)であることが明らかになったため、新種 Diexanthema hakuhomaruae(ディエクサンセーマ ハクホマルアエ)として報告しました。

日本は世界の超深海域の大部分が存在する西太平洋辺縁部に位置し、排他的経済水域内の超深海域が世界で最も広い国の一つです。このことから日本の生物多様性理解・生態系保全には、超深海域に住む生物の理解が欠かせません。今後も超深海域に住む生物の継続的な調査研究が強く望まれます。

なお本研究成果は、2023年4月4日(火)にActa Parasitologica誌にて公開されました。

論文名:Diexanthema hakuhomaruae sp. nov. (Copepoda: Siphonostomatoida: Nicothoidae) from the hadal zone in the northwestern Pacific, with an 18S molecular phylogeny(北西太平洋の超深海域から得られた新種Diexanthema hakuhomaruaeの報告とその系統的位置
URL:https://doi.org/10.1007/s11686-023-00676-z

 

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